「センダックの世界」セルマ・G・レインズ

昨日に続き、本日もセンダックに関する本をご紹介いたします。

昨日の投稿を読んでくださった方が、作品からセンダックの生い立ちが気になったとコメントをくださったのですが、日本でもこんなに愛され親しまれているセンダックですから、センダック自身に関する本もこんなに立派なものが出ています。

この『センダックの世界』は1980年、センダックが52歳の時に英語版で発売されたものを、邦訳、編集して出版されたものです。実に280ページにわたる充実した内容になっており、絵本の紹介や、センダックの過去の写真、イラスト、そして彼の生い立ちをなぞった豊富なテキストと、見応え、読み応え共にたっぷりな一冊です。折りたたまれたページを左右に開き、倍の大きさで絵を楽しめるページもあれば、しかけ絵本になっているページもあります。

訳者は絵本作家、翻訳家である渡辺茂男さん。この本を一年がかりで訳したそうです。渡辺さんはあとがきでこのようなことを仰っています。

「わたしは、去年の夏の始め、仕事場にしている山荘で、この本を読みはじめた。絵を眺め、文字を読み、絵を眺め、文字を読みしているうちに、わたしは、セルマ・G・レインズの紹介するセンダックの世界に魅き込まれ時を忘れた。ふしぎなことに、いつのまにか、セルマ・G・レインズは消え、センダックの声が聞こえはじめ、センダック自身が照れ臭そうに、つぎつぎと作品をとりあげながら、わたしに見せてくれるのだった」

そして渡辺さんは、この本のセンダックのことばはすべて、センダックが語っているように訳すことにしたそうです。そのせいでしょうか、この日本語版を読んでいても、渡辺さんが体験したことと同じような感覚を覚えるのです。

布装、函入り、そして厚さ3.8cm、重さ2.6kg!それが全てセンダックにまつわる内容なのですから、こんなに贅沢な本はありません。今回ご紹介するにあたり、私も少し読み返してみたのですが、忘れてしまっていたことも含めて、また新たにセンダックの絵本へ向き合う手掛かりを見つけたような、新鮮な喜びがありました。センダックは2012年に他界され、もう新しい作品を見ることはできません。ですがセンダックの作品は、一度読んだことのある絵本でもまだ読み終わっていないような気持ちになるんです。まだ、もっと、いろんな角度から読んでみたくなるんです。

とにかく、大きく重い本ですので、気軽に電車の中で読むということはできないのですが、家で気がついたときに少しずつ読み進めていく時間は、きっと特別な時間になると思います。そして、またセンダックの絵本をひらき、終わらない読書体験へと続いていくように思えるのです。


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センダックの世界」セルマ・G・レインズ

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