『おもちゃ籠/おもちゃ籠補遺(1915年/16年)』若尾謹之助本日は大正五年(1915年)刊行の貴重な和装本『おもちゃ籠/おもちゃ籠補遺』を更新しております。著者の若尾謹之助(1882年〜1933年)は明治末期から昭和初期の甲府の実業家、政治家で(貴族院多額納税者議員/東京電燈取締役、東京瓦斯取締役など)、本書はそんな若尾謹之助が、自らの幼年時代の甲府の子どもの遊び、歌、玩具などをについて、時折感想を交えながらつらつらと書き記した本です。目次などがなく、体系的に整理された構成でも無いのですが、エッセイと言うにはあまりに資料的で、学術本としてはあまりに随筆的という、ちょっと不思議な本ですね。(巻頭で、私は学者ではないので正確性に頓着しない、といったことも書かれています)巻頭には著者自身による玩具...22Dec2024news日々の絵本Blog
「満ちている」ただあやの当店でも今年3月に個展を開催させて頂いた画家、たただあやのさんの絵本デビュー作品『満ちている』をぜひご紹介させて下さい。なんと、まあ、素晴らしい絵本が誕生しました…!今年読んだ新刊絵本では個人的にNo.1かもです...!これは、変わらざるをえない自分自身を、その変わってしまった悲しみの底から立ち上がり、優しく肯定していく強く美しい、不思議な物語。たださんの絵画作品は以前から拝見させて頂いていたのですが、あの、多くの言葉を含むような(それでいて安易に言葉を付けてしまうと無粋になってしまうような)不思議な世界を描くたださんが、絵本のなかでどんな言葉を語るのだろうと、楽しみにしておりました。そして、早速読んでみると、本当に、唸ってしまいま...13Dec2024news日々の絵本Blog
Frobergueクリスマスカード 2024 by きくちちきいつも当店をご利用頂き誠にありがとうございます。毎年、当店をご贔屓にして頂いているお客様にお届けしているクリスマスカード、もうお手許に届いておりますでしょうか?今年は絵本作家のきくちちきさんに描いて頂きました。ちきさんの描くクリスマス、如何ですか。クリスマスはその年齢によって受け取る雰囲気、感覚が移り変わっていくと思うのですけれど、ちきさんが描いてくれた喜びに溢れたクリスマスは、自分にもいつかあった、幼い頃のワクワクとした楽しい、あのクリスマスを遠く思い起こしてくれました。みなさんも、いつかの幸せなクリスマスを、思い出すのではないでしょうか。皆さまが素敵なクリスマスと、そして良いお年をお迎えできますよう、当店もお祈りしております。こ...06Dec2024newsBlog
『かぜのこうさぎのピュピュン』ぬまのうまきぬまのうさんの絵本が読者に与えてくれる喜びは、日常の中の小さな幸せを、虫眼鏡で見るように拡大して、拡大して、その大きく見えた幸せがそのまま世界に広がって、空から海の端までまるごとくるんでくれる、そんなところにあると思うのです。この作品の中で話される「とくべつなひじゃないと おいわいしちゃいけないの?」という言葉はそんな、虫眼鏡で小さな幸せを覗き込むための、お誘いの言葉なのです。作者にはもしかしたら何か別の原則があるのかもしれないのですけれど、ぬまのうさんの絵本の登場人物たちはみな、何か行動をするときにはどれもそんな小さな幸せを、動機にしているように感じられます。そしてみなが、幸せを見つける虫眼鏡を持っていて、それという時にはポケット...04Oct2024news日々の絵本Blog
「THE LORD'S PRAYER(1934 First Edition)」Ingri & Edgar Parin D'Aulaireドーレア夫妻の絵本は日本語にも幾つか翻訳されているのでご存知の方も多いかと思います。(「ひよこのかずはかぞえるな」「トロールものがたり」など)エドガー・ポーリン・ドーレアは1898年スイス生まれ、ハンス・ホフマン美術学校(ミュンヘン)では、マティスに指導を受けていたようです。イングリ・ポーリン・ドーレアは1904年ノルウェー生まれ、イングリも同様にミュンヘンのハンス・ホフマン美術学校に通っていたようですね。その後二人は1925年に結婚、ドイツやフランスなどで美術学校に通ったり、絵の仕事をしつつ、1930年代前半頃からアメリカ、ニューヨーク拠点を移し、39年に子どもが生まれた後はコネチカットに移りそこで農場を構え、創作活動を続けました...22Mar2024news日々の絵本Blog
「I'm nobody who are you?」西田陽子 エミリー・ディッキンソン現在当店で開催中の西田陽子さんの銅版画展「Memory like melody」の中で、一番大きな作品がこちらの「I'm nobody who are you?」です。今回の個展は、当初西田さんから何かテーマとなるようなものが無いかとご相談を受け、そこで自分が幾つかご提案をし、その中から西田さんに、アメリカの詩人エミリー・ディキンソンを選んで頂いたのでした。そのディキンソンの詩作品から西田さんがインスパイアを受け、制作した幾つもの作品の中でも、個人的にも特に目を瞠る作品がこの「I'm nobody who are you?」です。女性の横顔。花を指でつまんで、風が吹いているようなので、外にいるのでしょうか?物思いに耽るような、遠くを...07Mar2024newsBlog
「大聖堂」レイモンド・カーヴァー/シバタリョウシバタリョウさんの個展「窓からの景色」の作品は昨日からオンラインストアでも販売を開始しております。こちらはアメリカの小説家レイモンド・カーヴァーの『大聖堂』から描いた3作品です。この『大聖堂』という作品はカーヴァーの中でも特に評価が高い短篇の一つかと思います。お話は、とある夫婦のところへ、妻の昔の知人である盲人が泊まりに来る、というものです。夫は盲人が泊まりに来るなんて、何かちょっと面倒だな、と思っている、けれど妻はこの知人とは、特別な思い出があるので、気持ちよく過ごして欲しい…、そんな少しだけすれ違っている夫婦の気まずい家の中の空気。妻は、結婚するずっと前にひと夏、この盲人のところで代読のアルバイトをしたことがあり、それ以来、ふた...09Feb2024newsBlog
『鳥さしの唄』ジャック・プレヴェール/シバタリョウ現在開催中のシバタリョウさんの個展「窓からの景色」ではメインビジュアルの絵はフランスの詩人、ジャック・プレヴェールの詩『鳥さしの唄』からシバタさんが絵を描いているのですが、今日2月4日はジャック・プレヴェールの誕生日でした。1900年なので、生誕124年ですね。今回の個展ではこのメインビジュアルの他にもう1点、プレヴェールの詩から描かれたもの「血と羽根」もあるのですが、その紹介はまた後日。『鳥さしの唄』(小笠原豊樹 訳)とても静かに飛ぶ鳥血のように赤くて暖かい鳥とてもやさしい鳥 ひとをからかう鳥だしぬけにこわがる鳥だしぬけにぶつかる鳥ほんとうは逃げたい鳥孤独な狂った鳥ほんとうは生きたい鳥ほんとうは歌いたい鳥ほんとうは叫びたい鳥血のよ...04Feb2024newsBlog
「動作」シバタリョウ個展「窓からの景色」よりシバタリョウさんの個展『窓からの景色』昨日から始まりました。当店としてはシバタさんの個展は2年半ぶり、2回めです。当店のショッパーやショップカードも描いて頂いているので、当店の世界観が好きな方にはきっと気に入って頂ける作家さんだと思います。本個展は前回のシバタさんの個展同様、自分がいくつかの文藝作品を選び、その中からシバタさんが描きたいと感じたものを、描いて頂く形になりました。プレヴェール、エリュアール、シュペルヴィエル、ファージョン…。この並びで既にうちのお店っぽいですよね…。さて、こちらは『動作』という作品です。フランスの詩人、ジュール・シュペルヴィエルの同名の詩から、シバタさんが描いたものです。この詩は自分がフランス語の勉強を...02Feb2024newsBlogイベント
「MARCELLA:A RAGGEDY ANN STORY」Johnny Gruelleジョニー・グルエルのラガディ・アンシリーズ。100年以上前にアメリカで生まれたこのシリーズは、その最初の作品「Raggedy Ann Stories」(1918年)が発売された当初から人気を博し、多くの人に愛されてきました。もう誰もが知っている本/キャラクターだと思うので、当店でわざわざ力を入れて取り扱うものでもないかな、と以前は思っていたのですが、ジョニー・グルエルがP. F. Volland社(1910’s〜20’s頃にアメリカのアールデコの流れを汲んだ画家や挿絵画家が、この出版社で幾つもの美しい子どものための本をつくっています)でこのシリーズを出版していたことを知ったり、この絵本「MARCELLA:A RAGGEDY ANN ...03Nov2023news日々の絵本Blog
「CINDERELLA」(1939年)Leonard Weisgard日本語にも多くの作品が翻訳され、愛されているレナード・ワイスガード。その最初期の作品『CINDERELLA』を先日、オンラインストアに出しております。絵本作家としてのデビューは37年の『Suki, the Siamese Pussy』だと思うので、この1939年出版のシンデレラは恐らく2作目か3作目ですね。(この本の中のコピーライト表記は38年なのですが、ワイスガードの公式HPのビブリオグラフィーページには39年と記されているため39年としました)現代の作家と組んで絵本を作っている印象が強いので、こうした古典童話の絵本を作っているのはちょっと意外な感もありますね。絵柄も、やはりワイスガードだなと言う部分もあれば、自分の良く知っている...29Jun2023news日々の絵本Blog
「ANIMAL LAND」Sybil and Katharine Corbet1897年にスコットランドで出版された、奇書とも言っても良いような、なんとも不思議な魅力を放つ絵本『ANIMAL LAND』が昨年、アメリカの本屋兼出版社である、50WATTSから復刻出版されました。この絵本の作者は4歳の女の子Sybilとその母親のKatharine Corbetです。すべての始まりは彼女が3歳の頃、人が誰も住んでいない『ANIMAL LAND』のお話を聞かせて欲しいと、母親にせがみ始めたことでした。それからは、シビルが自身でその『ANIMAL LAND』にいる不思議な動物たちのことを、詳しく語り始めたのです。娘が語り、母が描いた、想像上の架空の国の動物たち。誰も見たことのない、誰も見ることのない、2人の交わす会話...27Jan2023news日々の絵本Blog