「PEACOCK PIE」Walter de la Mare Barbara Cooneyイギリスの詩人ウォルター・デ・ラ・メアの子どものための詩に、バーバラ・クーニーが挿絵を描いた『PEACOCK PIE』(1961年)。自分は『PEACOCK PIE』はエドワード・アーディゾーニが挿絵を描いたもの(翻訳『孔雀のパイ』)は読んだことがあったのですが、バーバラ・クーニーのものは初めて見ました。アーディゾーニも素晴らしかったですが、このクーニーの挿絵も本当に素晴らしいですね。自分は50’s〜60’sのクーニーは大好きで、この時代のクーニーはスクラッチボードで表現するモノクロの世界が主体なのですけれど、この本ではスクラッチボードではなく鉛筆で描いているように思われます。モノクロのクーニーでスクラッチボードではないのは珍しい気...27Jul2025news日々の絵本Blog
『HAPPY ALL DAY THROUGH』Janet Laura Scottアメリカの忘れられた絵本作家/画家のひとり、Janet Laura Scott(1888-1968)の絵本を、紹介させて下さい。この絵本『HAPPY ALL DAY THROUGH』(1917年)は、当店には何度か入荷していたのですが、いつもオンラインストアに出す前に店頭で売れてしまいご紹介が出来ずにいたので、自分としては、いつもオンラインストアでご利用頂いているお客様にやっとご紹介できる…、といった思いでございます。Janet Laura Scottはアメリカ、ウィスコンシン州出身のイラストレーター/画家で、1910’sの後半からアメリカの出版社P・F・Volland社で、子どものための本の挿絵の仕事を始めました。P・F・Voll...08Jun2025newsBlog
「窓辺」Freyhold × シバタリョウシバタリョウさんは、今回のオマージュ展ではK・F・F・フライホルト(1878-1944)へのオマージュ作品を制作して下さりました。シバタさんは当店のショップカードやショッパーなどのイラストを描いて頂いている、当店ではお馴染みのイラストレーターさんかと思います。そんなシバタさんの選んだ作家、フライホルトはドイツの絵本作家です。現代美術の感覚を初めて絵本の世界に持ち込んだ作家とも評価されており、1908年に出版した「HASENBUCH」(クリスティアン・モルゲンシュテルン 詩)は現在のドイツでも再版され続け、ドイツ絵本の古典として、今なお非常に評価の高い絵本作家です。(個人的なことですが、今回作家さんが選ばれたオマージュされた昔の作家た...04May2025newsBlog
『Little Jumping Joan』アンリエット・ウィルビーク・ル・メール & 原倫子原倫子さんは、今回のオマージュ展ではアンリエット・ウィルビーク・ル・メールへのオマージュ作品を制作して下さりました。ウィルビーク・ル・メール(1889-1966)はオランダ出身の絵本作家です。10代の頃にフランス絵本作家の大家ブーテ・ド・モンヴェルの指導を受け、その才能を開花させました。1910年代に出版した数冊の童謡絵本は今なお形を変え再版され続け、世界中で愛されています。原さんはそのウィルビーク・ル・メールがマザーグースの童謡に付けた絵『Little Jumping Joan』を原さんのスタイルで描き出しました。ウィルビーク・ル・メールの持つ牧歌的で素朴な優しさが、原さん手を経ると洗練された都会的な感覚を帯びるのは本当に不思議で...03May2025newsBlog
「The hare of Inaba」千海博美千海博美さんは、今回のオマージュ展ではイワン・ビリービンへのオマージュ作品を制作して下さりました。当店でも2023年に個展をさせて頂いたのでご存じの方も多いかと思いますが、千海さんは木版(ラワンベニヤ)に彩色をし、そこから掘って文様などを刻み、画面を作っていくスタイルで制作をされています。オマージュをしたイワン・ビリービンは(1876-1942)はロシアの絵本作家、イラストレーターです。フォークロア的な装飾性とアール・ヌーヴォーが調和したような芸術性の高い絵で、ロシアの民話などの絵本を制作しました。その絵本は帝室文章印刷局(当時の通貨などを印刷していた国営の印刷局)で、技術の粋を集めて印刷された多色石版画印刷で非常に美しく、絵本の歴...29Apr2025newsBlog
『LA CHANSON DE RITA ET KURO』きくちちき今回の展示『Hommage aux artistes du livre d’enfants du passé:在りし日の、子どもの本の芸術家たちへのオマージュ』(オマージュ展)にて、きくちちきさんが選んだのはフランスの絵本作家、モーリス・ブーテ・ド・モンヴェル(1850-1913)です。ちきさんにこの企画展へのご参加をご依頼したのには一つ理由があって、雑誌の『東京人』2020年3月号の絵本特集に、ちきさんが描いたモンヴェルへのオマージュ作品が、本当に本当に素晴らしくて、その絵がずっと頭の中にあったからでした。この企画展への参加をお願いした際には、モンヴェルで描いて欲しいとは自分は言わなかったのですが、ちきさんが選んだのはやはりモンヴ...12Apr2025newsBlogイベント
「カリジェの町の大時計」ぬまのうまき『カリジェの町の大時計』当店ではおなじみの絵本作家さん、ぬまのうまきさんの新刊が発売になりました。『カリジェ』と言う町にある大時計のお話。二人の女の子が出会うための、小さな冒険と不思議な魔法。この絵本のどこがすごいって、まず、本当に、ぬまのうさんの絵の進化/深化がとてつもないですね…。これまでの作品にも見られる可愛らしいカットもありつつ、見開きページの絵の表現で見せていく。この見開きがどれも素晴らしいのです。(この絵本を読んだ方の中でも、どの見開き場面が好きかは結構分かれるのではないでしょうか。そして、その違う意見に対しても、あの場面の絵もすごいよね…!とお互い心から思えるほどどれも心に深く響くのです)自分は特に印象的だったのは、時...25Jan2025news日々の絵本Blog
『おもちゃ籠/おもちゃ籠補遺(1915年/16年)』若尾謹之助本日は大正五年(1915年)刊行の貴重な和装本『おもちゃ籠/おもちゃ籠補遺』を更新しております。著者の若尾謹之助(1882年〜1933年)は明治末期から昭和初期の甲府の実業家、政治家で(貴族院多額納税者議員/東京電燈取締役、東京瓦斯取締役など)、本書はそんな若尾謹之助が、自らの幼年時代の甲府の子どもの遊び、歌、玩具などをについて、時折感想を交えながらつらつらと書き記した本です。目次などがなく、体系的に整理された構成でも無いのですが、エッセイと言うにはあまりに資料的で、学術本としてはあまりに随筆的という、ちょっと不思議な本ですね。(巻頭で、私は学者ではないので正確性に頓着しない、といったことも書かれています)巻頭には著者自身による玩具...22Dec2024news日々の絵本Blog
「満ちている」ただあやの当店でも今年3月に個展を開催させて頂いた画家、たただあやのさんの絵本デビュー作品『満ちている』をぜひご紹介させて下さい。なんと、まあ、素晴らしい絵本が誕生しました…!今年読んだ新刊絵本では個人的にNo.1かもです...!これは、変わらざるをえない自分自身を、その変わってしまった悲しみの底から立ち上がり、優しく肯定していく強く美しい、不思議な物語。たださんの絵画作品は以前から拝見させて頂いていたのですが、あの、多くの言葉を含むような(それでいて安易に言葉を付けてしまうと無粋になってしまうような)不思議な世界を描くたださんが、絵本のなかでどんな言葉を語るのだろうと、楽しみにしておりました。そして、早速読んでみると、本当に、唸ってしまいま...13Dec2024news日々の絵本Blog
Frobergueクリスマスカード 2024 by きくちちきいつも当店をご利用頂き誠にありがとうございます。毎年、当店をご贔屓にして頂いているお客様にお届けしているクリスマスカード、もうお手許に届いておりますでしょうか?今年は絵本作家のきくちちきさんに描いて頂きました。ちきさんの描くクリスマス、如何ですか。クリスマスはその年齢によって受け取る雰囲気、感覚が移り変わっていくと思うのですけれど、ちきさんが描いてくれた喜びに溢れたクリスマスは、自分にもいつかあった、幼い頃のワクワクとした楽しい、あのクリスマスを遠く思い起こしてくれました。みなさんも、いつかの幸せなクリスマスを、思い出すのではないでしょうか。皆さまが素敵なクリスマスと、そして良いお年をお迎えできますよう、当店もお祈りしております。こ...06Dec2024newsBlog
『かぜのこうさぎのピュピュン』ぬまのうまきぬまのうさんの絵本が読者に与えてくれる喜びは、日常の中の小さな幸せを、虫眼鏡で見るように拡大して、拡大して、その大きく見えた幸せがそのまま世界に広がって、空から海の端までまるごとくるんでくれる、そんなところにあると思うのです。この作品の中で話される「とくべつなひじゃないと おいわいしちゃいけないの?」という言葉はそんな、虫眼鏡で小さな幸せを覗き込むための、お誘いの言葉なのです。作者にはもしかしたら何か別の原則があるのかもしれないのですけれど、ぬまのうさんの絵本の登場人物たちはみな、何か行動をするときにはどれもそんな小さな幸せを、動機にしているように感じられます。そしてみなが、幸せを見つける虫眼鏡を持っていて、それという時にはポケット...04Oct2024news日々の絵本Blog
「THE LORD'S PRAYER(1934 First Edition)」Ingri & Edgar Parin D'Aulaireドーレア夫妻の絵本は日本語にも幾つか翻訳されているのでご存知の方も多いかと思います。(「ひよこのかずはかぞえるな」「トロールものがたり」など)エドガー・ポーリン・ドーレアは1898年スイス生まれ、ハンス・ホフマン美術学校(ミュンヘン)では、マティスに指導を受けていたようです。イングリ・ポーリン・ドーレアは1904年ノルウェー生まれ、イングリも同様にミュンヘンのハンス・ホフマン美術学校に通っていたようですね。その後二人は1925年に結婚、ドイツやフランスなどで美術学校に通ったり、絵の仕事をしつつ、1930年代前半頃からアメリカ、ニューヨーク拠点を移し、39年に子どもが生まれた後はコネチカットに移りそこで農場を構え、創作活動を続けました...22Mar2024news日々の絵本Blog