本日はグリム童話の「つぐみのひげの王さま」にモーリス・センダック挿絵を付けた絵本が入荷しております。
こちらは日本語版も出ておりますが、入荷した本は1974年のイギリス版初版(アメリカ版は1973年)です。
お話はご存知のことも多いかと思います。
我儘で毒舌のお姫様が、父である王様を起こらせ、物乞いの妻にさせられ様々な苦労をするのですが、やがて幸せな結婚をする…そんなお話です。
グリム童話の中ではわりとシンプルでわかりやすいお話ですね。
さて挿絵を描いているセンダックなのですが、彼はこのお話に少し仕掛けを加えて楽しい絵本にしています。
この縦長の可愛らしい判型の絵本を開くと、まずタイトルページの下で、劇場の支配人のような男が、俳優、女優募集そして演目の「つぐみのひげの王さま」と書かれた看板を持っていて、その看板を男の子と女の子が興味深く眺めている絵が描かれているのです。
次のページもまだタイトルページで、そこでは支配人らしき男と男の子と女の子が本当にやれるの?と会話を交わしています。
次のページはセンダックによる献呈辞があり、その下で男の子と女の子が衣装に着替えているのが描かれています。
そしてその次のページからようやく「つぐみのひげの王さま」のお話が始まりまるのです。
つまり、センダックはこの絵本を舞台で演じられているもの、として描いているのですね。
この手法は特に珍しいものでは無いかもしれません。すぐに思い浮かぶのは、トミー・デ・パオラも同じ手法をしばしば使っていました。
こんな風に「子どもたちが演じている」と描くことによって、子どもがこの物語の中へ入って行きやすくする効果を狙っているのだと思います。
また、この作品に限らず、絵本を舞台として描く、ということをセンダックはいつも何処か意識していたのではないか、とも感じています。
一昨日紹介しました「うさぎさんてつだってほしいの」も、夜の場面の光の描き方は、まるで舞台上で強い光に当たっているかのような、不自然な光の中に人物が描かれていました。
もしかしたらこれは、センダックの幼いころの幸福な記憶(ブルックリンに住んでいたセンダックは週末に母親にマンハッタンの映画館に連れて行ってもらっていたそうです)そんな思い出の反映なのかもしれませんね。
是非オンラインストアでもご覧下さい。
「つぐみのひげの王さま」モーリス・センダック
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