たまたまなのですが、先週の西村繁男さんの絵本を紹介した際に上野駅の猪熊弦一郎さんの絵に少しだけ触れました。本日はそんな猪熊さんに関する本を2冊紹介いたします。
「いのくまさん」という猪熊弦一郎さんの絵に谷川俊太郎さんが文を書き、構成は杉浦範茂さんが手掛けているという豪華な絵本です。
様々な猪熊さんの作品を見せながら、それにひと言ふた言、谷川さんが言葉を付けています。それは詩だとか、そういうものではなくて子どもが猪熊さんの絵に入って行きやすいような呼びかけのようなものになっています。
猪熊さんの鳥の絵を集めたページには
「いのくまさんは とりが すき」
猫の絵を集めたページには
「いのくまさんは ねこも すき」
こんな風に短い言葉で、猪熊さんの絵に誘い、その後に
「いろがうまれる いろがささやく いろがさけぶ いろがうたう」
そう言葉を続け、猪熊さんの絵に触れる子どもたちが、もっとその絵の奥に入っていけるように谷川さんが手を引いていてくれるのです。
この絵本のカバーの折り返し部分には、猪熊さんの絵とあそぶぼう!と書かれていますが、まさにそんな絵本なんですね。
もう一冊は「物物」これは猪熊さんが集めた様々な「物」をホンマタカシさんが撮影をし、一冊の本にしたものです。物の選定は岡尾美代子さんが、巻末エッセイは堀江敏幸さんが寄せていて、これもまた豪華な一冊ですね。
その人生の中でパリ、そしてニューヨーク、晩年にはハワイへと、居を移し画業に励んだ猪熊さんは、各地で様々な「物」を集めていました。
ほんとうにちょっとしたものから、坂田和實さんも唸るんじゃないかと思えるようなものまで、その収集物には一貫性があるようで、ないようで、堀江敏幸さんも昔の「美術手帖」の猪熊弦一郎さんの「アトリエ訪問」の記事より引いていましたがそれは「あらゆるスヴニェールの陳列室」のようです。
こうした収集物を、猪熊さんの作品に繋げて考えることも出来ると思いますが、ホンマタカシさんがその物の纏っている空気までをもまるごと写した美しい写真を眺めているだけでも、味わい深く楽しめますよ。
猪熊弦一郎さんにまつわる、子どものための本と、大人のための本、是非オンラインストアでも御覧ください。
ちなみに写真は猪熊弦一郎さんの1979年の展覧会のポスターと一緒撮っています。
当店在庫はこちらです。
「物物」ホンマタカシ 堀江敏幸 岡尾美代子
「いのくまさん」谷川俊太郎 杉浦範茂
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