「きいろとピンク」ウィリアム・スタイグ William Steig

ウィリアム・スタイグと言ったら「ものいうほね」や「ロバのシルベスターとまほうの小石」など、日本でもたくさんの邦訳作品があり、慣れ親しんでいる方も多くいるかと思います。

シュールなのにどこか生々しくもあり、ユーモアという言葉だけでは説明できない面白さのあるお話を書き、絵も自身で手掛けています。

こちらの「きいろとピンク」は、そんなスタイグの絵本の中でも、特に哲学的要素の強いお話ではないかと思います。

ある天気のいい日に、二体のちいさな木の人形が新聞紙の上に並べられています。おもむろに起き上がった二体は、いったいどうしてここにいるのか、自分たちはどのように生まれてきたのかを話し始めます。きいろがあれこれと想像を膨らませ仮説を唱えますが、ピンクはそんな偶然ありえないと否定します。しかしきいろは100万年の年月の中ではこれくらいの偶然は起こりうると主張します。しかしやがては二体とも議論をやめて…

人間にとっての永遠のテーマでもある誕生の謎を、二体の人形たちが考え、話しあう内容は、もしかしたら大人の方が興味深く読むことができるのかもしれません。しかし、この話を「哲学的」だなんて思わずに読むことのできる子どもの方が、二体の会話をずっと面白く感じられるのかもしれませんね。哲学の入門書のように取り扱うこともできるのですが、「深さ」と同じだけこの物語に感じられる「素朴さ」こそが、スタイグの物語の持つ魅力のように思います。それだからこそ、とても人間臭く、そして親しみを感じられるのではないでしょうか。

難しいことを考えた末に、二体に訪れる結末は、読み手にちょっと不思議な気持ちを残す終わり方をします。思わずもう一度始めから読み返したくなるかもしれません。

二体の愛らしい人形たちに託された、スタイグの素朴な哲学を、ぜひあまり構えずに読んでみていただきたいです。

きいろとピンク

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