美しい短編小説のような絵本です。
「ゆきのしたのなまえ」
フランスの絵本作家/イラストレーター、フィリップ・デュマが絵を描き、お話は作家のクロード・マルタンゲが書いた不思議な作品です。
絵本は、おじいちゃんと孫が、手を繋いで街の中を散歩しているところから始まります。
孫はおじいちゃんに「あのひとのはなしをきかせてよ」と、もう何度も聞いたことのあるお話を、おじいちゃんにせがんでいるのです。
祖父は話し始めます。
ドイツを旅行中の、ある美しい教会でのこと。
教会を出たところに座っていた、物乞いの男と、その犬。
お金を渡して通り過ぎただけだったのに、何日もその男の顔が忘れられず、旅行を終えた後に、たまらずに住んでいる場所もわからないその物乞いに手紙を書いて出したこと。
手紙は男の元へ何とか届いて、祖父へ返事をくれたこと。
そして祖父から孫へ語られる、人間の尊厳のこと。
街の中を手を繋いで歩きながら、祖父は孫に語るのです。
孫はおじいちゃんに、その男の人の名前は何ていうの?と聞きますが、おじいちゃんは話しません。
何故教えてくれないのかと続ける孫に、おじいちゃんは「こころにとってかけがえのないものに、いつもなまえがあるとはかぎらない」「だからわたしも、男のなまえに雪をかぶせて、そっとひみつにしておくのさ」と答えるのです。
この絵本はここで終ります。
余韻を残す終り方は、様々な解釈も出来そうで、読書会などでこの絵本を読んで色んな人の感じ方を聞いてみたいと思うような、深みのある絵本ですね。
お子さんと読んだ時には、お互いこの絵本について色々と話して見ることも出来るのではないでしょうか・
絶版で、価格がやや高くなってしまっているのが残念なのですが、多くの人の感想を聞きたくなるような絵本です。
フィリップ・デュマの絵本はフランス語原書版が幾つかタイトルがございますので、ぜひ一緒に、オンラインストアの方でもご覧ください。
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