「かもめが見せてくれた」赤木三郎 文 田島征三 絵

一応、当店は横浜の古本屋なので、横浜についての本が入ってくるとちょっと嬉しかったりします。

こちらは少し珍し絵本かもしれません。

田島征三さんが絵を描いた「かもめが見せてくれた」と言う絵本です。

1973年に横浜市広報課から発行、となっているので恐らく一般流通はしていない絵本だと思います。

テキストを書いているのは詩人の赤木三郎さんです。

お話は、浜男と言う名前の男の子がある朝、横浜の港を歩いていると一羽の傷ついたカモメを見つけます。

男の子はカモメの手当をして面倒を見てあげるのです。

日に日に元気になったカモメはある日、浜男に一緒に空を飛ぼうと誘います。

そして浜男を背に乗せて飛び上がります。

飛び上がった途端に今いた町は消えて、不思議な旅が始まるのでした。

まず現れたのはパレオロクソドン、日本に昔生息していたナウマンゾウですね。横浜でも化石が発掘されたことがあるそうです。

カモメが羽ばたくたびに昔の横浜の姿が見えてくるのです。

道を作って、戦をして、時は流れ、外国から大きな船がやってきて、するとまたたく間に街の姿は大きく変わります。

大きな地震、そこからの復興、しかしまた戦争で焼け野原に。

そしてまた街を作り直し…。

この絵本は先に書かせて頂いたように1973年に発行されたものです。

戦後に街を作り直した後、たくさんの工場が建ち、街が煙にまみれ、カモメは病気になってしまいます。

そして、そのままカモメは眠りについてしまうのですが、夢の中ではカモメは緑に囲まれた、未来の、美しい横浜の姿を見続けるのです…。

それから40年以上経った2020年の横浜で暮らす自分は、このカモメが最後に見たような横浜に居るのでしょうか?

病気のカモメは元気になり、また飛び立っていきます。

その時に浜男とカモメは、夢で見たような場所でまた会おう、そう約束してお別れするのです。

今いるこの街が、カモメが夢見た街になっているか大きな疑問はありますけれど、この横浜の街のことを考え直すきっかけにもなり、また横浜の歴史を知ることも出来る良い絵本ですね。

横浜のお話なので、お話の方のことばかりの紹介になってしまいましたけれど、田島征三さんの絵もとてもとても良いので、ぜひオンラインストアの方でもご覧ください。


当店の田島征三さんの絵本はこちらです。

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