ご多分に漏れず、自分も小説/文学が好きだったので本屋になったわけでして、きと、そうした文学に多少の傾倒をもった人々にはきっと、いつまでも特別な響きを持つ作家の名前だと思うのです。カフカという名前をもった、この作家は。
この本が入荷したときにはこの「 La petite sœur de Kafka 」と言うタイトル、そしてイラストを描いているのがアンネ・エルボーと言うのを見て、大変興奮しました。
まるで自分のための…いや、うちの店のための本であるような、そんな風にも思えたんです。カフカ×アンネ・エルボーなんて、すごくうちのお店っぽいと思ったのですが、如何でしょうか。
自分の思う自分の店のイメージと、外から見たイメージでは大分違っているとも思うので、あまりピンと来てもらえないかもしれませんが…。
さて、そんなこの本「 La petite sœur de Kafka」(カフカの妹)なのですが、タイトルの通り、カフカの妹についての本です。
絵はアンネ・エルボーですが、テキストを書いているのはFrancois Davidと言うフランスの作家です。
カフカには三人の妹がいましたが、その中でもとりわけ仲の良かった、Ottilie Kafka(Ottla)について書いた短いテキストの本なのです。
自立心が強く、カフカにとても愛されたこの感受性の強い女性、オットラ。
カフカは40歳で亡くなってしまいますが、その人生の中でも妹オットラと過ごした時間をとても大切にしていたことはよく知られています。病気の療養で過ごした、オットラの農場での美しい生活。(オットラは農場経営をしていたのです)
オットラはユダヤ人ではない相手を結婚相手に選ぶのですが、それは両親の猛反対を押し切ってのことでした。その数年後にカフカは亡くなり、世界の情勢はますます不穏なものになっていきます。
ナチスがヨーロッパ世界を席巻しはじめ、オットラの姉妹たちも強制収容所に送られます。
オットラはユダヤ人ではない男性と結婚をしていたため、強制収容所へ送られることから免れていたのですが、そうした奇妙な恩恵(彼女の考えからすると)を自分が受けることは出来ないと、自らの意思で離婚を申し出て、連れ去られて行く自分の子どもたちに付き添うために、アウシュヴィッツへと付いていくのでした…。
今では世界中で広く読まれ、深く研究され、その人生もとても良く知られているカフカですけれど、それに比べて、そのカフカが愛した妹オットラについてはほとんど知られてはいません。けれどこれが、そのオットラの人生であり、死なのです。
テキストを要約しつつ、所々は拙訳ではございますが、翻訳して内容を記してみました。
エルボーのイラストも、いつもの楽しいものではなく、不穏な、死の匂いを否が応にでも感じてしまう、暗いものですね。
中綴じの薄い本なのですが、厚紙でカバーが造られていて、簡易的ながらも少し意匠があり、インデペンデントレーベルのZINEのような感じもあり、モノとしても面白い一冊だと思います。
ぜひオンラインストアの方でもご覧ください。
当店のアンネ・エルボーの本はこちらです。
カフカの本はこちらです
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