当店で只今開催中のぬまのうまきさんの個展「Nursery Rhyme」から、こちらの作品は「Twinkle twinkle little star」です。
「きらきらぼし」として、日本でも大変親しまれている童謡ですね。知らない人はほとんど居ないのではないでしょうか?
ぬまのうさんがinsatagramに解説を書いてらっしゃいますが、ぬまのうさんのこの作品は、「Twinkle twinkle little star」の元となったシャンソン「Ah! Vous dirais-je, Maman」から着想を得て、浮かび上がった物語を描いた作品なのです。
時計の針が天辺で重なる夜に、猫の兄弟がひとりの女の子と出会う…。
真夜中なのに、窓からは眩いほどの光が差し込み、不思議な明るい夜です。
ぬまのうさんは、この個展の開催にあたり、ウィルビーク・ル・メールから多くの着想を得たと聞きましたが、自分が近いと感じた既存の作家は、ドイツの絵本作家リロ・フロムでした。
リロ・フロムが描くグリム童話は、古い物語の持つ強さ、怖さが、その絵の中に深く響き、刻み込まれているように感じるのですが、本個展のぬまのうさんの作品たちも、物語が持っている、美しく、それでいて怖い、不思議の欠片が、絵の中に散りばめられているんですよね…。
赤いワンピースの女の子は、誰かを待っていたの…?
待っていたのは、恐らくこの猫の兄弟ではなく、猫たちはたまたま、見つけてしまったのではないでしょうか。
床の模様を消す光はまるで反転した影のようで、室内と屋外をひっくり返したような、そんな不思議の国の不穏さも感じます。
ここからどんな物語の底へ、続いていくのでしょうか。
(それともここが物語の底なのかもしれません…)
可愛らしく歪んだ装飾枠も、まるで子どもの悪戯で作られた可笑しなお話のよう…。
そう言えば、ここを見ているのは誰なのでしょう?
真夜中に起き出した子どもたちを、こっそり覗いている、この目は。
そんなことを考えていると、瞬く星たちが見せた一瞬の悪戯なのかもしれない、などとも思えてきてしまいますね…。
今、真夜中に、家でこの絵の紹介を書いているのですけれど、お店では「Nursery Rhyme」の絵たちが、灯りの消えた暗い古書店の中で、囁き合って、歌い合って、さわさわと動き出しているのではないかと、何だか不安になってきました…。
ぜひじっくり、この不思議な優しさと、暖かさと、そして怖さをも持った絵を、御覧下さいませ…。
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