アリス&マーチン・プロベンセンの絵本は、以前ご紹介した際に大きく分けて二つの作風があると書かせていただきました。
一つはディズニー・スタジオで培われたと思われるカラフルで構成的なもの、そしてもう一つはシェーカー的なアースカラーの作品で、本日ご紹介する「わたしのかわいいめんどり」は後者に当たるのですが、その中でもまた少しタッチが違うように思えます。皆さんの中にも、自分が知ってる/持ってるものとは雰囲気が違うなと思われる方がいるかもしれません。
そう思いながらこの本を読んでみると、最後の作者の紹介にこのような言葉がありました。
「私たちの絵の手法はたえまなく変わり続けています。さし絵のかかえている問題がすべて解決されたとは考えないからです。といっても、いたずらに実験的な試みに走るつもりはありません。単純かつ直接的なものを追求しつつ、私たちが真に伝えたいことを表現できるような絵本をつくりたいのです」
だから、二人の絵本はいつも完成形のようなスタイルを確立しつつ、それでいて常に違うテイストが見受けられるのか、と納得しました。
絵本の挿絵が、より効果的に、より絵本のために、最大限発揮されるよう、新しい作品と向き合うたびにお二人は考えていたのだと思います。
さて、この「わたしのかわいいめんどり」なのですが、エミリーというおんなのこがかかわいがっているめんどりのエッタが卵を一つ産み、卵からかえったひよこネディが大きくなるまでのささやかなおはなしです。
特別な出来事はなにもなく、無事にめんどりになったネディ(おとなになったのでネッタという名前になりました)も、そしてエッタも変わらず大好き、といって終わります。
子どもの読む絵本にしては、やはりちょっと暗い印象を受ける色彩かもしれませんが、素朴で懐かしい、暖かい空気が全編にわたって感じられます。そして、この絵本で特徴的なのは、全ての絵が枠の中におさめられていることです。
ちょうど、アルバムの中におさめれらた古い写真のように見えるそれは、エミリーやネディの成長記録を振り返るような物語に合わせてこの手法を選んだのでしょう。
こうした試みこそ、プロベンセン夫妻が一つ一つの作品に対して真摯に向き合ったことの表れなのだと思います。
ぜひ、この小さな絵本から、お二人の絵本への愛情を感じていただきたいです。
また、一つ一つが短い文章ですが、詩人岸田衿子さんの訳はこうした文章でこそ素晴らしいなと感じます。代表作「ジオジオのかんむり」にある、胸にストンと落ちて、なんだか記憶に残る響きがこの絵本でも感じられるかと思います。
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