不思議な生き物が、あたりまえに存在して人間といっしょに暮らしていても、それはおとぎ話の中だけのおはなし、だなんて思う必要はなくて、こんな場所がどこかにあるんじゃないかって、いつまでも信じていいんじゃないかと思うんです。
大畑いくのさんの絵本「貝のなる木」は、見たこともないちょっぴり変な生き物たちが、人間の女の子ヤッカと一緒にあっちこっちに駆け回ります。今日は具体的なお話はここには書かないでおいて、その代わりに、帯に書かれているこんな紹介文を引用させていただきます。
◉この絵本に登場する人間と不思議な生きものたち
おばあさんー貝の木の村に住む、音楽好きのおばあさん
ヤッカーおばあさん思いのまごむすめで、チェロの名手
トリウマ女ー台風をつれてくる、なぞの生きもの
ヤマネコ男ー態度は大きいが、たぶんいいヤツ
ウシ魚ー水陸両生、無口な小舟の渡し守
ものしりナマズー湖の小島で学問にはげむ、いそがしがり屋
それから、同じく帯に書かれた宇野亜喜良さんの推薦文も。
「いっぱい登場する音楽好きのキャラクターが好きです。みんな太古の記憶につながるアルカイックな狂気をもっています。メルヒェンの強さとロマネスクがここにあります。」
そして、写真の大畑いくのさんの絵を見ていただければ、すでに皆さんの頭の中にはいろんな世界が想像されているのではないでしょうか?
メルヘンは、大きく分けて“昔からの伝承のおとぎ話”という意味(民話メルヘン)と、“幻想的で夢のような世界観”(創作メルヘン)を表す言葉かと思いますが、この絵本には不思議とそのどちらの意味も感じられるような気がするのです。大畑さんがつくりあげた全く新しい世界のはずなのに、ずっと昔から語り継がれてきた伝説のような。
どこかシャガールのような筆致や浮遊感のある大畑さんの絵ですが、この不思議でちょっと不気味な雰囲気には、見たことのないメルヒェン世界へとグッと引きずり込む力を感じます。こちらは大畑さんのデビュー作ですが、彼女がどんな作家かを知ることのできる、代表作と言える作品ではないかと思います。
ちなみに大畑いくのさんの旦那様は、同じく絵本作家のスズキコージさんなんです。お二人での共著も出版されていますが、作品を見ると、この二人が互いに惹かれあうのも納得です。
出版社がなくなり、こちらの「貝のなる木」はすでに絶版となってしまっております。気になりましたら、ぜひサイトの方でこの不思議な世界を覗いてみてください。
当店在庫はこちらです。
「貝のなる木」大畑いくの
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