今日はついさっきまで、別の絵本の紹介を書いていたのですが、思うところがあり変更して、こちらの絵本をご紹介します。
いわさきちひろさんの「戦火のなかのこどもたち」です。
反戦絵本はたくさんあります。その悲惨さを伝えることはとても大事なことだと思います。
しかしいわさきちひろさんの絵本は、戦争の悲惨さが前面に出ている絵本ではありません。
描かれるのは、友達の声や、断片的な思い出、まるで詩のような。
青春時代を大戦のさなかに過ごし、自身も空襲を体験したいわさきさんは、この絵本のあとがきにこう書いています。
「戦場にいかなくても戦火のなかでこどもたちがどうしているのか、どうなってしまうのかよくわかるのです。子どもは、そのあどけない瞳やくちびるやその心までが、世界じゅうみんなおんなじだからなんです」
ノーベル賞作家のオルハン・パムクが言っていたことも思い出します。
「すべての真の文学は、すべての人はお互いに似ているという子供っぽい楽観的な確信から生まれます」
わたしたちがみな近い存在だと言う希望と想像力。遠い場所の、遠い時間の、遠い人の言葉も、この想像力から、理解や、労りや、優しさ、慈しみが生まれるのではないでしょうか。
引用ばかりで申し訳ないのですが、最後にこの絵本の文章を引用させて下さい。
赤いシクラメンのなかに
いつもゆれていた
わたしのちいさなおともだち
赤いシクラメンの花が
ちってしまっても
やっぱりきえない
わたしのこころのおともだち
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