夜の街は何処もイルミネーションで彩られ、その光の中を歩いていると小さな子どものように、クリスマスの到来が待ち遠しい、何だか心躍るような気分にいつの間にかになっている気がします。
アドベント/待降節、そうした本来的な意味とはまた違った待ち焦がれる喜びではありますが、全く違うとも、言い切れない気もします。
「たいていの人は、クリスマス・イブとクリスマスの日くらいしか楽しまない。それにあとは大晦日くらいだ。だけど、それじゃあ十分と言えない。少なくとも、クリスマスの一ヶ月くらい前から、喜んで待ち焦がれているようでなくちゃな。一年の最後の日、つまり大晦日には、お前も、遠慮せずに悲しんで良いんだよ。一年が、あっという間に過ぎ去ってしまったということは、決して嬉しいことじゃないからね。だが今、このクリスマスの前だけは、悲しんでちゃいけないよ」
こんな風に子どもに優しく話しかける父親が描かれるのは、ヴォルフディートリヒ・シュヌルの「とくべつな借り物」と言うお話です。
クリスマスツリーを買うことが出来ない貧しい親子の心温まるお話で、こんなお話が幾つも収録されているこの本「クリスマスのゆめ」はドイツの児童文学作家の大家プロイスラー(ホッツェンプロッツ、クラバートなど)やヤーノシュなどを始めとした様々な作家による短編集です。
この中の一篇、キャサリン・オールフリーの「クリスマス・キャロル」と言うお話も素敵なお話なんです。
クリスマスを控えたある町の、貧しい、わんぱくな子どもたちのお話です。
みんなクリスマス気分で浮かれているのに、自分たちにはちっとも良いことがない。お巡りたちは増えて、盗みもできなくなるし、学校では合唱の練習ばっかり、そんな悪ガキたちはどうやってお金を稼ごうかと相談をします。
そして悪ガキたちの中の唯一の女の子、ヘスターの発案でクリスマス・キャロルを歌ってお金を稼ぐことにするのです。最初は反対していた子どももいましたが、何だかんだで練習をして、クリスマス当日を迎えます。
ちょっとした作戦が功を奏して、この悪ガキたちは思っていた以上のお金を集めるのですが、この奇跡の夜に、最後に歌いに入った家で、子どもたちは自分たちがそんなことをするなどということは想像もしていなかった「善い行い」をするのです…。(この家でどんなことが起こるのかは是非読んでみて下さい)
そうして稼いだお金もなくなって、凍えるクリスマスの夜に、町へ帰る最終バスも終わりぶらぶらと長い道のりを歩いて帰る道中見上げる夜空の美しさは、他の何ものにも例えがたい美しさで、この子どもたちをまた見下ろしているのです。
クリスマスの待ち遠しさを、こうして本を読みながら静かに噛みしめるのも楽しいことではないでしょうか。
この本の当店在庫はこちらです。
「クリスマスのゆめ」
0コメント