本日更新したマーシャ・ブラウンの本を紹介させて下さい。
「目であるく、かたちをきく、さわってみる。」というマーシャ・ブラウンが写真に文章を付けた本です。
この本は以前佑学社から三冊分冊で「マーシャ・ブラウンの写真絵本」(絶版)として出ていたものを、一冊にまとめ本なんです。
マーシャ・ブラウンは皆さんご存知かと思いますが「三びきのやぎのがらがらどん」を始めその作品ごとに画法や画材を変え、その本に相応しい絵をいつも作り出し、素晴らしい絵本を数々出版した作家です。
また、その受賞歴も華々しく、コールデコット賞を3回受賞(歴代最多)、次点のオナー賞も含めると計9回も受賞しているアメリカを代表する絵本作家のひとりです。
そんな「絵本作家」の「写真絵本」なのですが、その作品ごとに様々な手法を試みた彼女らしく、この本でも普通の写真絵本とは違った、例えばそれは以前紹介しましたイーラ/ワイズ・ブラウンによる絵本などとは異なった趣があるんです。
それを裏付けるかのように「写真絵本」と言う括りで以前は出ていたのですが、こちら、2011年に港の人より出版された版ではそうした括りにはなっていません。
読んでみると分かるのですが、絵本というよりも、詩と写真の本と言うべきものでしょうか。
マーシャ・ブラウンは言葉を(日本語では谷川俊太郎さんの見事な訳で楽しめます)、感覚を研ぎ澄ませるために使っているように読めます。
この本はタイトルからも分かるように五感をテーマにした本で、視覚/聴覚/触覚がそれぞれ独立しながらも相互に作用し、そしてそれが世界に対して開いてくようにと、そんな意図が読者へ投げかけられているのですが、やはりそれは「言葉」を媒介にしてなのですね。
少し前に読んだ國分功一郎さんの「暇と退屈の倫理学」でも指摘されておりましたが、感覚を洗練させるにはその感覚の言語化という作業が必要不可欠なんだと思います。
この本では國分さんはユクスキュルの「環世界」という概念を紹介し、人間とは異なった体験世界をもつ他の生き物と人間の世界の感じ方を対比し、人間は他の生きものよりもこの環世界を移動することに長けた生き物であると言っています(とても簡略化した説明ですが…)。
このマーシャ・ブラウンの詩/言葉と写真の本を読むと、そのことがなお一層分かる気がしてくるのです。
「みることはまた だれかのつばさをかりて とぶこと」
そう書くマーシャ・ブラウンは言葉の力を使って、また私たちが普段見るものとは少し違った「見えるもの/写真」を使って、体験する世界を広げさせて(変容させて)くれるのです。
読むことが体験になり得る、素晴らしい本です。
また本日はかなり前に「表紙を見た瞬間にその美しさに思わず手に取ってしまう絵本が極まれにある」と紹介しましたマーシャ・ブラウン/アンデルセンの「白鳥」を入荷しております。
当店在庫はこちらです。
「目であるく、かたちをきく、さわってみる。」マーシャ・ブラウン
「白鳥」マーシャ・ブラウン
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