「満ちている」ただあやの当店でも今年3月に個展を開催させて頂いた画家、たただあやのさんの絵本デビュー作品『満ちている』をぜひご紹介させて下さい。なんと、まあ、素晴らしい絵本が誕生しました…!今年読んだ新刊絵本では個人的にNo.1かもです...!これは、変わらざるをえない自分自身を、その変わってしまった悲しみの底から立ち上がり、優しく肯定していく強く美しい、不思議な物語。たださんの絵画作品は以前から拝見させて頂いていたのですが、あの、多くの言葉を含むような(それでいて安易に言葉を付けてしまうと無粋になってしまうような)不思議な世界を描くたださんが、絵本のなかでどんな言葉を語るのだろうと、楽しみにしておりました。そして、早速読んでみると、本当に、唸ってしまいま...13Dec2024news日々の絵本Blog
Clarke Hutton 1898-1985本日は大英博物館やヴィクトリア&アルバート博物館にもその作品が所蔵されている版画家/挿絵画家Clarke Huttonの絵本を4冊オンラインストアに更新しております。Clarke Huttonの絵本作品がすべてそうなのかは不明なのですが、この4冊はどれもリトグラフで刷られています。石版ではなく金属版を使ったものかな、と思うのですが、印刷の感触としては初期のペール・カストールシリーズ(ロジャンコフスキーなど)や、ダーロフ・イプカー、ドーレア夫妻などのリトグラフ刷りの絵本の印刷に近いですね。この国の歴史絵本シリーズ(A PICTURE HISTORY OF〜)はまさに「子どものための美しい絵本」を体現するような本で、ページを捲っ...12Dec2024news日々の絵本
『かぜのこうさぎのピュピュン』ぬまのうまきぬまのうさんの絵本が読者に与えてくれる喜びは、日常の中の小さな幸せを、虫眼鏡で見るように拡大して、拡大して、その大きく見えた幸せがそのまま世界に広がって、空から海の端までまるごとくるんでくれる、そんなところにあると思うのです。この作品の中で話される「とくべつなひじゃないと おいわいしちゃいけないの?」という言葉はそんな、虫眼鏡で小さな幸せを覗き込むための、お誘いの言葉なのです。作者にはもしかしたら何か別の原則があるのかもしれないのですけれど、ぬまのうさんの絵本の登場人物たちはみな、何か行動をするときにはどれもそんな小さな幸せを、動機にしているように感じられます。そしてみなが、幸せを見つける虫眼鏡を持っていて、それという時にはポケット...04Oct2024news日々の絵本Blog
「THE LORD'S PRAYER(1934 First Edition)」Ingri & Edgar Parin D'Aulaireドーレア夫妻の絵本は日本語にも幾つか翻訳されているのでご存知の方も多いかと思います。(「ひよこのかずはかぞえるな」「トロールものがたり」など)エドガー・ポーリン・ドーレアは1898年スイス生まれ、ハンス・ホフマン美術学校(ミュンヘン)では、マティスに指導を受けていたようです。イングリ・ポーリン・ドーレアは1904年ノルウェー生まれ、イングリも同様にミュンヘンのハンス・ホフマン美術学校に通っていたようですね。その後二人は1925年に結婚、ドイツやフランスなどで美術学校に通ったり、絵の仕事をしつつ、1930年代前半頃からアメリカ、ニューヨーク拠点を移し、39年に子どもが生まれた後はコネチカットに移りそこで農場を構え、創作活動を続けました...22Mar2024news日々の絵本Blog
「MARCELLA:A RAGGEDY ANN STORY」Johnny Gruelleジョニー・グルエルのラガディ・アンシリーズ。100年以上前にアメリカで生まれたこのシリーズは、その最初の作品「Raggedy Ann Stories」(1918年)が発売された当初から人気を博し、多くの人に愛されてきました。もう誰もが知っている本/キャラクターだと思うので、当店でわざわざ力を入れて取り扱うものでもないかな、と以前は思っていたのですが、ジョニー・グルエルがP. F. Volland社(1910’s〜20’s頃にアメリカのアールデコの流れを汲んだ画家や挿絵画家が、この出版社で幾つもの美しい子どものための本をつくっています)でこのシリーズを出版していたことを知ったり、この絵本「MARCELLA:A RAGGEDY ANN ...03Nov2023news日々の絵本Blog
ぬまのうまき『Nursery Rhymes』オンラインストアスタートしました現在お店で開催中のぬまのうまきさんの個展『Nursery Rhymes』の作品、および、同個展のために作られた私家版絵本作品、2024年のカレンダーなど、本日よりオンラインストアでの販売も開始いたしました。ぬまのうまきさんによる、懐かしくも新しい、童謡絵本の世界をオンラインストアでも、どうぞ御覧下さい。この個展のために作られた私家版絵本「Nursery Rhymes」は私家版ながらハードカバー、金の箔押しの美しくも可愛らしい絵本になっています。本を開くと、まるでオルゴールの箱を開けたかのように、懐かしいメロディ、韻律がページからは立ち上がってきます。どこか、遠くからかすかに聞こえてくるかのような、胸の奥の、いちばん近いところから響い...19Oct2023news日々の絵本入荷情報
「Joggeli Soll ga Birli schuttle!」Lisa Wenger本日更新した「Joggeli Soll ga Birli schuttle!」の作者、Lisa Wenger(1868〜1941)はエルンスト・クライドルフと同郷のスイス/ベルン出身の画家、児童作家です。この絵本は、スイスのわらべうた「ヨッケリなしをとっといで」を絵本にしたものですね。このわらべうたは日本ではフェリクス・ホフマンの絵本が翻訳出版されておりますので、この絵本で知っている方も多いのではないでしょうか。ホフマンの作品は40年代に作られたものですが、Lisa Wengerのこちらの絵本は初版は1908年の出版ですので、ホフマンよりも大分古い作品ですね。Lisa Wengerは30年代にはスイスで一番読まれた絵本作家でもあった...13Aug2023news日々の絵本
『Hochzeit im Walde』1921年版 リトグラフ/額装本日はドイツの絵本作家エルゼ・ヴェンツ・ヴィエトールの額装商品をオンラインストアに更新しました。『Hochzeit im Walde』の1921年(恐らく初版)のもので、印刷はリトグラフで刷られています。お話はドイツの児童文学作家、詩人のAdolf Holstによるものですね。複雑な筋は特に無いのですが、タイトルの通り『Hochzeit im Walde』(森の結婚式)ある虫の結婚式の一日が、短い韻文で綴られています。大まかにですけれどあらすじを…。きのこの王様が、これから開催される結婚式を祝福します今日はこの二匹の結婚式近くから、遠くから招待客がやってきます妖精は、蝶(蛾?)にのって船に乗ってくるものもいます勿論音楽と行進もありま...06Aug2023news日々の絵本
「A Cat Can't Count」Blossom Budney William Wondriskaグラフィックデザイナーが出した絵本って結構ありますけれど、実は、結構自分はこのジャンルに対して懐疑的な気持ちがあり、厳しい目で見てしまうのですが、アメリカのグラフィックデザイナーWilliam Wondriska(ウィリアム・ワンドリスカ)の絵本はいつも楽しくて、好きです。すごい、好きですね。この『A cat can’t count』(Blossom Budney×William Wondriska)もとても良いですね。なかなか見ない珍しい絵本なので、お値段は結構してしまうのですが、イラストも内容も素晴らしい。単純な数字の絵本とは違って、数の概念とは、数えることとは、測定することとは?ということを優しく問いかけ、考えさせてくれる絵本...20Jul2023news日々の絵本
「CINDERELLA」(1939年)Leonard Weisgard日本語にも多くの作品が翻訳され、愛されているレナード・ワイスガード。その最初期の作品『CINDERELLA』を先日、オンラインストアに出しております。絵本作家としてのデビューは37年の『Suki, the Siamese Pussy』だと思うので、この1939年出版のシンデレラは恐らく2作目か3作目ですね。(この本の中のコピーライト表記は38年なのですが、ワイスガードの公式HPのビブリオグラフィーページには39年と記されているため39年としました)現代の作家と組んで絵本を作っている印象が強いので、こうした古典童話の絵本を作っているのはちょっと意外な感もありますね。絵柄も、やはりワイスガードだなと言う部分もあれば、自分の良く知っている...29Jun2023news日々の絵本Blog
『ASK ME QUESTION』Tomi Ungerer皆さん御存知のトミー・ウンゲラー。日本でもとても人気の作家なのですが(もちろん自分も大好きです!)未翻訳の本も多いんですよね。未翻訳の本が多いと言っても、その多くはウンゲラーのもう一つの側面、グロテスク/エロティックな作品が中心なのだと、自分は思っていて、ウンゲラーの子ども向けの作品は、もうほとんどが翻訳されているのかな、と思っていたのですが…、いやいや、まだありました。この『ASK ME QUESTION』(1968年/HARPER & ROW)です。各ページには『?』が隠れたイラストと、子どもが発するような、ちょっと変な問いかけ。その質問は、ナンセンスのような、イノセントのような…。でも、そうした空気を模した、ウンゲラー...02Jun2023news日々の絵本
「リッランとねこ」イーヴァル・アロセニウス若くして亡くなった芸術家が、まだ幼い愛娘のために描いた1冊の絵本。スウェーデンで1909年に刊行されて以来、愛され続けたこの古典名作絵本『リッランとねこ』。日本語の翻訳版は、以前福音館書店から出ていたのですが、ここ10年ほどは重版もされず、品切れになってしまっておりました。しかし昨年末に徳間書店から復刊され、また新品の絵本が手に入るようになりました。この絵本の流通が安定している(欲しい時に注文をすれば手に入る)のは、大変喜ばしいことです…。何を隠そう、自分もこの絵本を心から愛する一人なのですから…。お話は、一人の小さな女の子、リッランが猫にのってどこまでも、どこまでも、お出掛けをする話…。道中リッランは、豚に会い、ワニに会い、怖いお...25Mar2023news日々の絵本