「専門知はもう、いらないのか<無知礼賛と民主主義>」 トム・ニコルズ

先日も少しだけ書かせて頂きましたが、当店でも新品の書籍の取り扱いをスタート致します。4月はじめにはオンラインストアの方にも、当店厳選の新品書籍のコーナーを作る予定(最初は数は少ないのですが、だんだん増やしていこうと思っております)ですが、現在でも既にお取り寄せの対応は可能でございます。

全ての出版社に対応できる訳ではないのですが、1週間程度で新品の本をお取り寄せ出来ますので、amazonなどで注文する前に、当店のことも思い出して頂けたら嬉しいです!

本日紹介するこちらは絵本ではないのですが、こんな本もお取り寄せ出来ます。(中古品も在庫ございます)

「専門知はもう、いらないのか<無知礼賛と民主主義>」

トム・ニコルズ(2019年みすず書房)

本書はアメリカに蔓延する反知性主義、蔑ろにされる専門知/専門家、そうした空気感への抵抗、警告として書かれた(アメリカでは2017年の出版)ものですが、現在の日本でも非常に身近な問題として感じていることが様々書かれています。

リベラルと保守の断絶、大衆による専門家の軽視、SNS上などで蔓延るそうした軋轢は人々を疲弊させ、さらなる心の距離をも作り出しています。

自分も数年前から(震災後の2012〜13年頃からでしょうか)強く、社会全体に「何か健全でない」空気が段々と濃くなっていることに、非常なストレスを感じるようになっていました。

その「何か健全でないもの」は、反知性主義だったり、ポリティカル・コレクトネスへの嫌悪、といった言葉でもある程度説明が出来ると思うのですけれど、そうしたものよりもさらに大きく、深刻に、多くの人々の無意識に浸透してしまっているとも感じていました。

本書はそうした様々な現在の状況、専門家とSNS上の素人の意見がどちらも平等な貴重な意見であるなどという、間違った平等思想。ある事柄において、その事柄に対する知識を持っていないほど、人の意見を聞かずに自説を強調する傾向を持ってしまうダニング=クルーガー効果。さらにそうした傾向を強めてしまうエコーチェンバー現象。などなど、こうした状況を改めて言語化し再認識させてくれます。

ワイドショーで芸能人が、専門家を前にして(前にしていたらまだマシな方かもしれないですね…)自説を同じレベルの意見として堂々と述べることの社会的な不利益。

ネット検索でだけでわかったつもりになってしまう、無知を恥じない態度。

きっと多くの人がこうしたことには何かしらの違和感を抱えていると思います。

この本にはそうした現状を打開するための解決策や、何かしらの答えが示されている訳ではありません。

ですが、まずこうした違和感に目を逸らさず、一人一人が考え始めることこそが、より良い社会にするための一歩なのだと、強く思います。

この本は、まず考え始めるための、一歩目の本です。

現代社会の、悪いことばかりが書かれている、目を背けたくなるような本かもしれません。

それは決して気持ちの良い読書ではないかもしれませんが、自分たちの暮らすそれぞれの場所を、更により良いものへとするために、必要な読書であると思います。多くの人に読んで頂きたい一冊です。


「専門知はもう、いらないのか<無知礼賛と民主主義>」 トム・ニコルズ

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