「はるなつあきふゆ」ジョン・バーニンガム

ジョン・バーニンガムの絵本の言葉、あの短く切り詰められた言葉がとても好きなんです。

何度も思い出す言葉、心の中で暗誦して、繰り返す言葉。

はるになったら

それは意味としては普通の言葉なので、例えばそれを私が口に出していったとしても、誰も、何か本の中の言葉を言っているとは思わないと思うのですが、けれど口に出して言う私の心に中には、バーニンガムの描く風景とともに、その言葉が響いているのです。

はるになったら

バーニンガムは日本語訳はその短く美しい言葉を、谷川俊太郎さんの素晴らしい訳で読める本が多いのですが、谷川さん以外でも光吉夏弥さん、岸田衿子さんが手掛けており、そのどれもが素晴らしいのです。

このバーニンガムの絵本「はるなつあきふゆ」は岸田衿子さんが翻訳をしております。

大きな絵に、1ページにひと言ほどの言葉、深い余韻が響き、葉の音や、風の匂いがするような言葉が添えられています。

はるになったら

ほら すをつくるとり

どろんこであそぶ ぶた

とびはねる ひつじ

ぱしゃんと みずにもぐるあひる

はなはいっぱい

こんな風に、季節の詩が歌われているのです。

なつになったら

あきになったら

ふゆになったら

同じ言葉、そして同じ場所の風景(そこには一本の大きな木と農場と丘が描かれています)で始まるそれぞれの四季の詩です。

言葉のことばかりを書いてしまいましたが、実はそれよりもこの絵本で注目して頂きたいのは、バーニンガムの絵なんです。

個人的に、バーニンガムの絵の仕事としては最高傑作だと思っております。

大きな判型の絵本なので、バーニンガムの絵を十分に楽しめるのですが、なんと、四季それぞれに四つ折りにされているページがあって、広げると55cm×43cmほどのポスターのようになっているのです。

切り取って額装し、並べて飾ったら、それは素晴らしいと思います。

バーニンガムの描く四季、その風景には想像する物語があり、温度があり、それは手に触れるように、肌で感じるように、焚き火の暖かさや雪の冷たさが感じられます。

強い風の日、雨の匂い、南風、陽の光の感触で季節が変わったと実感するような日、地上の美しい自然が鮮やかに描かれ、読む私たちは記憶の中の「或る一日」をこの絵本の風景に重ねて追体験するのです。

はるになったら

今年もそう呟いてばかりいたら、もう春も盛りでした。

やがてすぐに夏になり、それから秋になり冬になり、そしてまた春が来るのでしょう。

ある季節を思い出すこと、そして待ち焦がれること、また、今の季節を喜ぶこと、そうした四季とともに生きることの喜びが、このバーニンガムの絵本によって、よりいっそう胸の中で輝きを増す気がするのです。


また少し前にもなってしまいますが、当店サイトのブログにバーニンガムの「おじいちゃん」について書いたこともありましたので、もしご興味あれば覗いてみて下さい。


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はるなつあきふゆ」ジョン・バーニンガム

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