水というものは、自然と呼ばれるものの中で、私たちに一番近い存在と言えるでしょうか。
先日紹介した大阿久佳乃さんの「のどがかわいた」でもその表題の作品で「水」と言う観念が言語によってかなり違う、と言うことが書かれていました。「water」と「水」の違い。考え始めると、とても興味深いです。
今日はまた違う「水」の絵本を。
阿部海太さんの「みずのこどもたち」と、そのスピンオフ作品「All Seeing Eye」です。
「よるみずをのむ」その一文から始まるこの絵本は、自身の中を流れる水を辿って、その水が、この地球のすべての生命たちと同じ水であること、そして、その水がこの地球上の全てを優しく包んでくれていることを解き明かしてくれる、美しい絵本です。
透明な水が多くのものに例えられるように、阿部さんはこの絵本の中で、水に限りなく輝く様々な色彩を与えています。
その色彩はまるで印象派のような、と最初は思ったのですが、一番感覚が近いのはボナールではないでしょうか。
光と水、この地球を取り巻くものの全ての両親。
この輝くような美しい絵本と対になったもう1冊の絵本「All Seeing Eye」は一転してモノクロの世界で表現されています。
夜の海、いいえ、湖でしょうか?一艘の船と一人の少年。
掌に水を掬って、口をつける。
「みずのこどもたち」が全ての水なるものへと広がっていく絵本だとしたら、こちらは、ある一滴の水へと集約していくような絵本です。
すべての水の中のある一滴、ひとすくい。
この少年の水を飲む一口。それは本当に、喉がかわいたように飲むのです。
(それはまるで、少年たちが、ガラリヤ湖の水を飲むお話、ウーリー・オルレブの美しい短編「のどがかわいた」に出てくる、あの少年のようです)
「All Seeing Eye」は先に言ったように全編モノクロの絵で作られているのですが、最後のページにだけ、阿部さんが筆入れし彩色された暗い水面の頭上に浮かぶ星が(月でしょうか?)あるのです。
怪しく輝く、頭上の星。
それは水に溢れるこの地球と対称的な、別の星の「水」の存在をほのめかしているようでもあります。また別の「水」の物語へと続いていくように。
現在「みずのこどもたち」は中古の本もございますが、新品もお取り寄せ可能でございます。
そして「All Seeing Eye」(新品)はSUNNY BOY BOOKSの出版で限定200部(ナンバリング入り)のものです。
この美しい二冊をぜひ一緒に、当店オンラインストアで御覧ください。
当店の阿部海太さんの絵本はこちらです。
ところで、余談ではございますがこの「みずのこどもたち」を読んだ時に最初に思自分が思い出したのは、Rachel’sと言うアメリカのバンドの美しい一曲「Water From the Same Source」でした。
もし興味ありましたら、youtubeなどでも聞けるかと思いますので、聞いてみて下さい。
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