「芸術は一体何の役に立つのか?」こんな問いは、普段から芸術に触れている人にとっては幼稚な問いに思えてしまうかもしれません。
でもそれを、例えば全く芸術に興味の無い人に対して、煙に巻くような論理的帰結ではなく、強い説得力をもって簡潔に答えることが出来るのかと言われれば、難しいとも思います。
素朴な問いであるが故に、答えるのは難しいのではないでしょうか。
ですが、この西巻茅子さんの「えのすきなねこさん」はこの問いに答えている絵本なのです。
あるところに絵の好きな猫さんがいました。毎日毎日、朝から晩まで絵ばかり描いて暮らしていました。
そこに友達のウサギさんがやってきて「絵なんか描いて何の役に立つの、私は毎日ミシンがけ、ほら、猫さんのシャツもできたわよ」そう言って、シャツを置いていきました。
次にやってきたのはキツネ君で「おや、今日もお絵かきですか。絵なんて何の役に立つんだろう。僕みたいに釣りをすれば、美味しい魚が食べられるのに」そう言って、魚を一匹置いていってくれました。
夕方にはサルさんがやってきて「へえ、また今日もお絵かきかい。絵なんて何の役にも立たないねえ。壊れた椅子も直さないで」そういうと、大工のサルさんは猫さんの壊れた椅子を、トントンと直してくれました。
その夜猫さんは、ウサギさんの作ってくれたシャツを着て、キツネ君が釣ってくれた魚を、サルくんが直してくれた椅子に座って食べます。
「絵なんて何の役にも立たないってみんながいうけれど、、、だけど、、」
それから数日後、ある雨の日に、三人の友だちは揃って猫さんの家へ、絵を見せてもらいに遊びに行って、、、
絵を見るお友達、絵を見せた猫さん、お話の終わりには、とってもシンプルな答えが用意されています。余りに素朴過ぎて、もしかしたら幼稚な答えに思えてしまうかもしれません。ですが、最初にも言ったように素朴であるが故に強い答えなのです。もしかしたらこれ以上に強い答えはないかもしれません。
西巻茅子さんの描く絵は可愛らしくとても親しみやすく、大袈裟なテーマの絵本であるかのように書いてしまいましたが、そんなことは全く無く、小さいお子様から楽しめる絵本になっています。
猫さんが描く絵がミロ風なのもなんだか素敵です。
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