本日はアンネ・エルボーの絵本(フランス語原書版)を更新しているのですが、この「les moindres petites choses」はエルボーの作品の中でも、最高傑作のひとつなのではないでしょうか。未翻訳/2008年の作品です。
エルボーの作品は、時には詩のようで、時に神話のようで、その言葉はアフォリズムのようでもあって、平易な言葉であっても難解に感じてしまうこともあります。
この作品も、シンプルで短いテキストから成っているのですが、そのひとつひとつの言葉をちゃんと理解しようとすると、深い森の中へ迷い込んでいってしまうような感覚さえあります。
「les moindres petites choses」(最も小さなことたち)
一人の女性、マダムアヴリルのささやかな日常を描いただけのお話です。
庭を持ち、その庭の手入れをし、家では編み物をし、考え事をし、家事の合間に日なたで座り、また物思いに耽る。
呼吸をし、手を動かし、自分の身の回りの、とてもゆっくりとした動きや、ただそこにある悲しみ、空虚さ、柔らかな光をただ感じ、考え続けているのです。
はっきりとは、この女性が考えている事柄が、読み手に明かされることはありません。マダムアヴリルはただ感じ、考え、生きているのです。
この日常で、何かそこに答えが示されることなどあるでしょうか。
ゆっくりと、時には素早く、変化していく周りのそれぞれ。何はなくとも悲しい気持ちになる日。反対に、何もかもが陽気に感じられること。ため息と笑顔。
わたしたちの身の回りを埋め尽くす、些細な、とても大切なものたちの数々。
マダムアヴリルは、物思いに耽り、いつまでも言葉を探しています。
決して名前のつかない、ドラマもない、わたしたちの小さな日常について。
このテキストだけでなく絵も、エルボーの最高の作品の一つだと思います。
しかけ絵本、と言うには少し大げさですが、本編はどのページも片方のページが二つ折りになっていて、折りたたまれた部分を開くと絵が展開するようになっているのです。ですので、開いて3ページ分の横長の大きな絵を楽しめるようになっているのですね。
しかも開いたそのページからはどれも、驚きや楽しさ、そして悲しみ、寂しさ、そうした様々な感情が、感じられるんです。
そして何より、ただただ美しいのです。
この日常の美しさ。
アンネ・エルボーが好きな方には必ず、まだその作品を見たことのない人にもきっと、満足して頂ける素晴らしい作品です。
ぜひオンラインストアの方でも御覧ください。
※現在ヨーロッパからの荷物が全て止まってしまっており、国際物流が回復するのは正直いつになるか全くわかりません。再入荷は年単位になってしまうことが考えられますので、気になる方はお早めにどうぞ。
当店のアンネ・エルボーの絵本はこちらです。
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