「DRAWINGS」西淑

西淑さんの、ドローイングの作品集が入荷致しました。

ミシン綴じで、美しい箔押しの、シンプルながらも洗練された造本です。

ドイツの詩人、オスカー・レルケの詩のテキストの上に、西さんが線を描いた作品集。

西さんの引くその線は軽やかなようで、逡巡しているようでもあります。

スッと引かれたのではなく、何かに抵抗しながら引っ掻いた線のようにも見えます。

書くことは掻くことだ、そう言ったのは石川九楊でした。

書くということは世界を引っ掻いて、その痕跡を残すこと。

西さんの引く線にはそうした引っ掻く行為、世界に対して痕跡を残す感触があります。

絵がただ単に、何かの上にあるのではなく、物質とぶつかり合った上で残る場の、何かしらの跡。

西さんのインタヴューを読みましたが、学生の頃は彫刻を専攻されていたとのこと。もしかしたらこれらの線も、そうした彫刻の制作から、遠く響いているものがあるのかも知れませんね。

インタヴューでは「祈り」ということも仰っていました。

「こうして絵を描いていることも、突き詰めていくと、祈りにつながる気がしています。それは、宗教というよりも、ごく普通の生活の中で、今日も一日楽しく過ごせますようにとか、ささやかなお願いみたいなもので、そうした小さな祈りを絵にこめて描いていきたい」LIVERARY/WHAT ABOUT YOU? #35

西さんの絵から感じる静謐さは、この祈りに由来していると考えるのは自然なことでしょう。

描かれるモチーフは動物や植物、身の周りの日用品と思わしきものから抽象的な図形まで様々ですけれど、そのどれからも、日々の祈りとでも言えるような身近さと静けさが感じられます。

今は、日常から離れた、迷いの多い日々が続いています。

この本の祈りが、人々のそんな心を少しでも、良い方向へと向わせてくれますように。

700部限定の慎ましやかな、美しい本です。

ぜひオンラインストアの方でもご覧ください。


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