多くの作品を後世に残したアンデルセンですが、このナイチンゲールはその中でも特に優れた作品のひとつではないでしょうか。
人気や知名度で言えば、人魚姫やおやゆび姫がアンデルセンの代表作なのかもしれませんが、このナイチンゲールも負けず劣らず深い魅力を持った作品で、偏愛している方も多くいるのではないでしょうか。
このアンデルセンの「ナイチンゲール」の絵本が2冊入ってきましたのでご紹介します。
ひとつは当店で最も力を入れて推している作家のひとり、ナンシー・エコーム・バーカートの「NIGHTINGALE」、そしてもうひとつはフェリシモ出版より出ている赤木かん子さんによる「こんなアンデルセン知ってた?」シリーズ(先日ご紹介した高野文子さんの火打ち箱もこのシリーズでした)の一冊で、丹地陽子さんの絵による「ナイチンゲール」です。
ナイチンゲールのお話は知っている方も多いかと思いますが、中国の皇帝が、その巨大な庭で鳴くナイチンゲール声を愛します。しかしある時日本の皇帝より美しい装飾の機械仕掛けのナイチンゲールが贈られると、宮廷の者達は皆、その機械仕掛けのナイチンゲールを重宝し、生きているナイチンゲールのことを忘れてしまいます。
やがて皇帝は病気になります。
もう誰もがその死を抗えないものだと諦め、死神も迎えにやって来るのですが、その時に窓辺にナイチンゲールがやってきて鳴き、死神を追い払ってくれる、というお話です。
物語の大きな要素だけを抜き出すと、グリム童話などに比べ少し弱い気がします。
個人的には、このお話を優れたものにしているのはディテールのように感じられるのです。
少し突っ込んで話になってしまいますが、最初、中国の皇帝は自分の庭で鳴くナイチンゲールの存在を知らず、外国の本で、この皇帝の宮廷の中で一番素晴らしいものはナイチンゲールの歌声である、と書かれているのを読み、知ります。僅かなことではあるかもしれませんが、この自分の一番優れたものを外部から知らされる、と言うテクニック、そして皇帝の持つ美しいあまりに多くもつ富の描写、ナイチンゲールの鳴き声の表現、死神の持つ宝飾品など、こうした数々のディテールでこのお話は磨かれ、とびきりの美しい物語になっているのだと思われます。これはアンデルセンの技量のなせる技なのだと思います。
美しい物語なので、美しく繊細な絵を描く作家さんがやはり描きたいと思うのでしょうか。バーカートも、丹地陽子さんも、このお話をさらに美しく魅力的なものにしてくれています。
バーカートは山水画を彼女の筆で昇華させたナイチンゲールを描き、丹地さんは、技法というよりもそのディテール(装飾や衣服、木の形、建物など)で、シノワズリを見事に表現し、華麗で可憐なナイチンゲールを生み出しています。
どちらもおすすめの絵本なので、気になりましたら是非オンラインストアのほうで御覧ください。
「NIGHTINGALE」NANCY EKHOLM BURKERT
「ナイチンゲール」赤木かん子 丹地陽子
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