エドワード・アーディゾーニが絵を描く「月はどうしてできたか」は、有名な他のグリム童話に比べると神話的な要素が見られ、民話的な感触の強いグリム童話の中では少し毛色の違うお話です。
月がなく、夜は真っ暗闇だったある町の兄弟が別の町へ行くと、木に掛かっている月のおかげでその町は夜でも明るいことに気がつきます。
これはいいものを見たと、兄弟は協力してその月を盗み、自分たちの町の木に吊るすのですが、、、。
最後には死者の世界、そして天国の世界までを巻き込んで、月が空に掲げられるまでの物語となっています。
都会に住んでいると夜、外を歩いていても街灯の明かりが多く、月の明かりを感じられることは余りありません。
まだ夜の明かりが少なかった頃の、貴重な月の明かりのお話、という点では民話的な要素を少し感じられるかもしれません。
アーディゾーニによって描かれるこの絵本の世界は、月明かり、そしてそれによって生み出される影と暗闇が繊細に、そしてその光の大切さが丁寧に描かれています。
月を見上げるときに、人々が感じる不思議な気持ちから生まれ出たひとつのお話を、アーディゾーニによって豊かな物語の絵本に仕上げられています。
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