「Favorite Fairy Tales TOLD IN FRANCE」Roger Duvoisin

当店に原書版が入荷したこの、ヴァージニア・ハヴィランドによる編纂で、多くの著名な絵本作家たちが挿絵を付けた、Favorite Fairy Talesのシリーズは「世界のむかしばなし」シリーズとして、1960年代には日本語にも翻訳されておりましたが、すでに絶版になってしまって久しいものです。

一つの国のお話で一冊となっていて、それぞれに絵を描いている作家が違うのですけれど、今回当店に入荷した本の絵を担当した作家さんの名前を挙げるだけでも、ロジャー・デュボアザン(フランス)、エイドリアン・アダムス(スコットランド)、ベッティーナ(イングランド)、バーバラ・クーニー(スペイン)、エバリン・ネス(イタリア)と非常に豪華な顔ぶれとなっていますね。

中でも特に注目したいのは、ロジャー・デュボアザンが挿絵を描いている「TOLD IN FRANCE」(1959年初版)です。

このシリーズの一番最初に出された3冊のうちの一冊なのですけれど(他の2冊はドイツとイングランドです)、この本は絵の印刷がリトグラフで刷られています。

他の後年のものは普通のオフセット印刷なので、この最初の1959年発売の3冊のみはリトグラフ印刷だったのか、それともこのデュボアザンのものだけがリトグラフだったのかはまだ不明なのですけれど、この一冊は特に美しい印刷の絵を見ることが出来るのです

(1959年の最初の3冊のうちの1冊であるベッティーナの「イングランド」も今回入荷しているのですけれど、入荷したものはオフセット印刷です。ただこちらは初版ではなく2刷のため、初版のものはリトグラフ印刷だったという可能性もあります)

私見では恐らくデュボアザンのものだけがリトグラフだったのではないかな、と思っています。

と言うのも、デュボアザンの描く絵とリトグラフの相性がとても良いように感じるからなのです。

デュボアザンの絵本は日本語にも多くなっているので、皆さんイメージが掴みやすいかと思うのですが、あの、まるでマティスをも思わせるような鮮やかな色使いと切り絵のような大胆な色の面と面の組み合わせは、本の印刷ではオフセットよりも鮮やかに感じさせるリトグラフ印刷によって、その絵の良さが存分に引き出されていると感じるのです。

古い絵本は印刷方法も様々で(今回「リトグラフ」と簡単に言ってしまっていますが、そのリトグラフ印刷の中にも幾つも種類はございます)、印刷方法や、紙によって、その絵本の印象も大分変わったものになりますね。

1970年頃より後のものは99%はオフセット印刷ですけれど(勿論オフセット印刷でも、この印刷は素晴らしいなあ、と思うものも多くあります)、もしお手持ちの古い絵本の中に、この絵本は明らかに他の絵本と印刷の感じが違うなあ、と思うものがあったら、ぜひ気に留めてみてください。また違った本の楽しみ方を見つけることが出来るかもしれません。

話が少しずれてしまいましたが、こちらのFavorite Fairy Talesのシリーズは、素晴らしい絵本のシリーズですので、ぜひオンラインストアの方でもご覧ください。


Favorite Fairy Talesシリーズ

0コメント

  • 1000 / 1000