こちらは出久根育さんの絵本デビュー作「おふろ」です。
先日のギャラリーハウスマヤ、そして巷房での個展も伺わせて頂きましたが、その感想はまた別に書こうと思っております。
この「おふろ」は出久根さんのHPでの略歴では1994年となっておりますが、本書の奥付は1996年発行となっていますね。どちらが正しいのかちょっとわかりませんが、既にデビュー作である本書から影の表現などに現在の出久根さんの繊細な手の仕事にも通じる面を窺うことができます。
ある男の子がひとりでお風呂へ入ると赤いネクタイの男の人が待っていて、湯船へ入るとジャングルの探検隊に捕まえられたり、石鹸に助けられたり、お風呂の入りすぎでしわしわになったおじいさんとおばあさんが現れたりと、お風呂という独特な空間の中で空想的な冒険が展開されます。
バーニンガムにも「もうおふろからあがったら、シャーリー」というお風呂での空想の冒険のお話がありますし、こうした密室空間では人の想像力が自然と掻き立てられる気がします。個人的にもお風呂でぼーっと考え事していることも屡々あります。
作家のレイモンド・カーヴァーも創作はトイレですると言っていたのを読んだことがある気がしますし、ミュージシャンのNina Nastasiaもトイレで作曲するというのを聞いたことがあります。トイレとお風呂では違うかもしれませんが、アメリカ人の話なので同一空間の可能性はあるのではないでしょうか。きっと想像力が羽ばたく空間なんですね。
この絵本は2007年に復刊されており、そちらでは消されてしまっているのですが、もとの版では表紙に副題のように「シャンプーをしてるとうしろにだれかいるようなきがしてめをあけられません」とも印字されたりしています。
余談ですがこのお風呂、何故か窓際にサボテンが飾ってあります。湿気で枯れてしまわないか心配ですが、これもこのお風呂の不思議さの伏線なのでしょうか。
何処かとぼけた人物たちと浸かるお風呂の冒険を楽しめる絵本です。
当店在庫はこちらから「おふろ」
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