「満ちている」ただあやの

当店でも今年3月に個展を開催させて頂いた画家、たただあやのさんの絵本デビュー作品『満ちている』をぜひご紹介させて下さい。

なんと、まあ、素晴らしい絵本が誕生しました…!今年読んだ新刊絵本では個人的にNo.1かもです...!

これは、変わらざるをえない自分自身を、その変わってしまった悲しみの底から立ち上がり、優しく肯定していく強く美しい、不思議な物語。

たださんの絵画作品は以前から拝見させて頂いていたのですが、あの、多くの言葉を含むような(それでいて安易に言葉を付けてしまうと無粋になってしまうような)不思議な世界を描くたださんが、絵本のなかでどんな言葉を語るのだろうと、楽しみにしておりました。

そして、早速読んでみると、本当に、唸ってしまいました…。

1枚1枚の絵の表現は勿論のこと、言葉と一体になって進んでいく絵本の絵としての心地良さ、場面が切り替わるときの驚きと喜び…、その『絵本』としての巧みさがあまりに見事すぎて。

上野紀子のシュルレアリスム系の作品を少し思い出しましたが、たださんの『満ちている』は、何と良いますか、より『絵本』である意味がある作品なんですよね。

3〜4歳くらいのお子さんから、もう100歳を超えている方にまで、多くの方の心にこの絵本は深く染み込んでいくと思います。

この絵本によって、心のなかに何かがゆっくりと満たされて、静かな波紋が揺れるその満たされた水面に映るものを(それはきっと、読む人一人ひとり異なることでしょう)、見つめながら、眠りにつく…。

なんて幸福な絵本体験なのだろう…。

多くの人にお届けしたい、素晴らしい絵本です。


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