「うみのむこうは」五味太郎

絵もお話もともに手がけている絵本作家さんの中でも、五味太郎さんほど(絵は勿論ですが)お話が素晴らしいと感じる作家さんはなかなか思い浮かびません。

読むといつも、五味さんは詩人だなあと感嘆してしまいます。クリスマス絵本の「もみの木そのみをかざりなさい」そしてこの「うみのむこうは」はその中でも特に秀逸なものではないでしょうか。

ひとりの子どもが砂浜で海を眺め、その向こうには何があるか想像するだけのお話なのですが、変わらないその子どもの背中と、水平線の上に次々に展開される想像の世界に、寂しさにも似た憧れが呼び起こされます。

何よりも心に響くのは五味さんの短く連なった言葉たちです。子どもの想像のつぶやきが、韻を踏みながら、まるで海にほうられるように、投げ出されは消え、また投げだされては消えていきます。

言葉と絵が補完し合い、めくるめく想像と感傷の彼方へと誘う、その余韻がいつまでも心に残り続ける、素晴らしい絵本です。

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