「ヨリンデとヨリンゲル」ベルナデッテ・ワッツ 絵 若木ひとみ 訳 Bernadette Watts

絵本を読んでいると時折訪れる感覚があります。

それはまるで小さな子供に戻って、夜の世界という未知に怯えているような、それと同時にワクワクしているような、そんな不思議な感覚です。

個人的にその感覚を一番与えてくれるのが、バーナデット・ワッツ(ベルナデッテ・ワッツ)の絵本です。

こちらはワッツの「ヨリンデとヨリンゲル」お話はグリム童話です。

二人の愛しあう若い若者が、森の中で迷い、魔女の住む城へと近づいてしまったために魔法をかけられて、娘ヨリンデは小鳥に変えられ、城に閉じ込められてしまいます。ヨリンゲルは絶望し嘆きますが、夢で見た魔法を解く花を探し出し、ヨリンデを救い出します。

グリム童話に隠された、人間の根源的な部分、野生的な部分を、ワッツは本当に上手に絵に置き換えていると思います。

1942年イギリス生まれのワッツはブライアン・ワイルドスミスに師事したのち、絵本作家としてのキャリアをスタートしました。その作品は既に多くの言語へ翻訳され、イギリスを代表する絵本作家の一人となっています。

本作品や、「赤ずきん」などに顕著なのですが、ワッツの描く絵の不思議さは、人間があまり前面に出て来ないところだと思います。自然や、何か人間よりももっと大きなものの中に紛れてしまっているように描くのです。

それはやはり、子供の頃のあの感覚、世界が自分よりずっと大きく、未知のものだった感覚の再現なのではないでしょうか。

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