「Wohin der Schlaf sich schlafen legt」Reiner Kunze Karel Franta

夏の夜は青い。

真っ黒ではなくて青、何処かそんな風に感じてしまうのは、きっと水のせいなのだと思います。

梅雨に入り、例えば夜にふと目を覚ますと、寝苦しくて開けていた窓から雨音が聞こえる。窓を閉めようとカーテンを開けると暗闇の中で見えない雨が降っている。

本日オンラインストアに更新させて頂いた本の中からの1冊、こちらはライナー・クンツェ詩/カレル・フランタ絵による「Wohin der Schlaf sich schlafen legt」です。

日本でも「あるようなないような話」(和田誠・絵、絶版)など、その作品の幾つかは翻訳されているドイツ出身の作家ライナー・クンツェの詩にカレル・フランタが絵をつけた本です。

ページをめくると、印象的な絵が幾つも目に飛び込んできます。

夜の中を走る汽車が、ベッドを牽引していて、そこでは女の子が眠っている。丘にはバラが咲き乱れ、空には満月。

別のページではキリストの磔刑が象られた墓に、小鳥が三羽とまっています。辺りには草木が生い茂り、柔らかい日差しが差し込んでいます。

どの絵にも静けさが満ち、不思議と私たちの遠い気持ちを呼び起こしてくれるようです。それを懐かしさと呼ぶのだったでしょうか?

こんな風に書くと、以前、ドイツの絵本作家リロ・フロムについて書いた時のこととも響き合う気がします。

その絵は見たことのない風景、聞いたことのないお話のはずなのに、それでも何処か、懐かしい気がしてしまう。人間の古い記憶を呼び覚ます作家、このカレル・フランタも、そんな絵を描く作家なのです。

そしてカレル・フランタの描く夜もいつも青いのです。

暗闇の中で見えない中にも漂う水の存在、匂い。

この絵本の表紙にも使われている、馬がピアノを弾く絵も、青に包まれています。

青い馬、青いピアノ(この言葉は詩の中にも出てきます)、鍵盤は水のように零れ地面に消えている。

音が鳴っているのかもしれませんが、聞こえるのは水の音だけのような気もします。

眠い目をこすって窓を閉め、またベッドへ入ると、まだ微かに聞こえる雨音が夢へと誘います。

そしてそこは、カレル・フランタが描くような青い夜の世界。


当店のカレル・フランタの本はこちらです。

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