『しらゆき』も『べにばら』も

もしも女の子がふたり生まれたら、ひとりは純白な心を持つ清楚な女性になるよう「しらゆき」と、もうひとりは情熱的な心を持つ明るい女性になるよう「べにばら」と名づけよう。

なんてことを考えてしまうほど、主人公の姉妹が可愛くてしかたないこの絵本。
バーバラ・クーニーの描く女の子はいつも、不思議なほどけなげさが感じられます。


お話は、グリム童話の一編。貧しいながらも母親と仲良く暮らす姉妹のもとに、一匹のクマが現れるところから始まります。そこから、ふたりに不思議な出来事がおこり始めるのです。
いろんな災難に遭いいつも助けを請う小人と、助けても助けても悪態をつくその小人に少しも動じないふたり。その姿には、思わず笑いがこみ上げ、そして、そんなふたりに幸せ訪れるようにと、願わずにはいられません。


ページいっぱいの四角い構図に、隅までしっかり彩色された絵の多いクーニーですが、この絵本では、やさしい輪郭線のあるデッサン風の描き方がされています。そのため、色彩よりも黒のやわらかさが作り出す素朴さを味わうことができ、また、絵の具がのる前のクーニーの鉛筆運びが見られる貴重な一冊でもあります。


全体のストーリーこそ、姿を変えられてしまっていた王子の魔法が解け、ヒロインと結ばれるという王道の物語ではありますが、細部に散りばめられた小さなエピソードがお話にたくさんの色を添えてゆきます。
何もすることがないときには、おかあさんに本をよんであげるしらゆきや、毎朝おかあさんのベッドのわきに、きったばかりのバラの花たばをいけておくべにば ら。ふたりの愛らしい姿がすこしずつ描き出されてゆくことで、私たちは、物語の結末で幸福な気持ちを味わうことができるのです。

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