哲学的なものを言うライオン、ではなくて、一生懸命哲学しようとするライオン。
もう、それだけで愛おしくて笑ってしまう。
もともと工藤直子さんの詩の中にだけいたこのライオンは、長新太さんがその詩を読み、後から描き上げたのだそう。
工藤さんの書く、けものの王であるライオンの、「てつがく」をしているけなげでとぼけた姿を、長さんの絵の具と筆が描く。その、ライオンのなんとも言えない表情!お二人の間に通じ合った、おかしみと誠実さが、この絵本には詰まっている。そんな印象を受けます。
きょうライオンは「てつがくてき」になろうと思った。
哲学というのはすわりかたから工夫したほうがよいと思われるので、尾を右にまるめて腹ばいにすわり、まえあしを重ねてそろえた。
(だれか来てくれるといいな。「なにしてるの?」と聞いたら「てつがくしてるの」って答えるんだ)
けれど、だれもこないまま日が暮れてしまいます。
(てつがくは肩がこるな。おなかがすくと、てつがくはだめだな)
そうして、ライオンは今日はてつがくを終わりにして、かたつむりに会いにいきます。
この絵本は、1981年に季刊誌「飛ぶ教室」の創刊0号(非売品)の中に掲載された作品が、2014年に単行本として発売されたものです。
本編ももちろん、巻末に書かれた工藤直子さんのこの作品にまつわるエピソード読むと、ますますこのお話を好きになってしまいます。
貧相な自家版に載っていたライオンくん、長さんに描いてもらって、初めて姿が現れたのだね。あんた、しあわせもんだねぇ。
今回、この絵本で三〇年以上眠っていた長さんのライオンが目を覚ましてくれた!
ライオンと私は、いま嬉しくてなりません。
自分の生まれる前に描かれたそんな作品を、めぐりめぐって目にすることができた、私もまた、今、とてもしあわせもんだなぁと思うのです。
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