「…I Never saw another butterfly… Children’s Drawings and Poems from Terezin Concentration Camp」

「…I Never saw another butterfly…」

このタイトルが本の真ん中、やや上部に印刷され、本のカバーにはシンプルな、可愛らしく、無垢な印象を与えるイラストが載っています。

なんだか寂しそうな本だな、と思ったのが、この本を見た時の最初の印象でした。

本の下部には副題が示されています。

「Children’s Drawings and Poems from Terezin Concentration Camp 1942-1944」

パッと見たときに感じるこの本の印象の理由が、すぐにわかったのでした…。

「Terezin Concentration Camp」普通に、テレージエンシュタットと言えば、ピンとくる方も多いかと思います。

そこは、大戦期、チェコの北部にナチスドイツによって作られた、ユダヤ人収容所です。この収容所の子どもたちの、詩とイラストを集めたのが、この本なんです。

テレージエンシュタットは、悪名名高い他の絶滅収容所とは少し性格が異なり、ここはそうした収容所への中継地点として機能していたようですが、けれども劣悪な環境などから、ここでも多くのユダヤ人が命を落としました。

また、この収容所の出来方や、様々なことなどが関係し、ここでは社会生活も(それはほんの僅かな、厳しい水準ではあったと想像されますが)営まれていました。

それはナチスドイツが対外的に、ユダヤ人に対する非人道的行為を言い逃れするための宣伝場所でもあったからです。

ここには幾つもの詩とイラストが載っています。

詩は、厳しい生活、孤独や寂しさ、それらを拙い言葉で吐露するものも見られますが、しかし、その何処にも、僅かな希望の光を見ていることが読んでいるとわかるのが、とても辛いです。

ここで行われていたコンサートの様子を書いているものなどもあります。

イラストも、痛々しく感じるものも多いのですが、花や緑の風景、手を取り合う人々、草原で寝転がるイラストなどもあり、子どもたちが、そうした場所で生きていたのだということがまざまざと感じられます。

これらは、プラハのユダヤ人博物館で保存されていたものから選ばれ、出版がされました。

当店在庫品の本書はその1971年英語旧版(現在は違う装丁で出ております)、多くの言語に翻訳され出版されましたが、まだ日本語版は出ておりません。

巻末には判明したそれぞれイラストの作者について書かれていますが、ほぼすべての子どもは「…died in Oswiecim on…(日付)」(アウシュヴィッツで亡くなりました)で終わっています。

多くの人に触れてみてほしい本です。


…I Never saw another butterfly… Children’s Drawings and Poems from Terezin Concentration Camp

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