「ぼくたちとたいよう」エイドリアン・アダムス

今日は日の出を見に行く。

そんな日は時折あって、でもそんなに早起きではないのでどちらかと言うと夕焼けを見に行くことの方が多い気がしますけれど、散歩がてら、家を出る時には、太陽が登るのや沈むのを見る口実で、近所の見晴らしの良い丘へと、開けた川原へと、足を向けるのです。

エイドリアン・アダムスの美しい絵本「ぼくたちとたいよう」(この絵本も表記揺れで「アドリエンヌ・アダムズ」の表記になっていますね…)は、二人の兄妹が、きっとそう決めて、日の出を見に行くと決めて、まだ暗いうちに家を出る所から始まります。

「こんなに早くおきたのははじめてだ」

妹を連れて、朝露に濡れる芝を踏みながら、丘へと向かいます。

東の空を見ると、丘のまわりがピンクに染まって、真珠のように輝いている。

「日の出だ!」

日の出を見るのははじめてだ。

太陽は金色に輝き、東の空を、

音もなく静かに上っていく。

この二人の兄妹は太陽の下、一日、陽の光を全身で感じながらその日を過ごし、やがて日は暮れていきます。

夜になると母親が、太陽のこと、地球のこと、その動きのことを教えてくれます。

この絵本は、そうした科学的な説明と、太陽が人間に与えてくれる喜び、美しい詩的なイメージとが混ざりあった絵本になっています。

この詩的なイメージを支えているのは、絵を描いているエイドリアン・アダムスです。彼女は魔女の絵本などで「夜」の印象の強い作家かもしれませんが、この絵本を見ればそのイメージは180度変わるのではないでしょうか。

淡い陽の光の中の自然、そして子どもたち。

柔らかい色彩で描かれた花々はそこにあるだけで、この星の様々な営みの、閾の一つの顕れ、奇跡的な結晶であるかのようです。

この絵本の主人公である兄は夜、太陽と地球の営みに感謝しつつ、眠りにつきます。

日の出や夕焼けを見た日は、そうでない日よりもずっと、この「一日」ということが胸の中に、日の落ちた後空に残る暗い黄金色の淡い光のようにいつまでも、残っている気がします。


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ぼくたちとたいよう」エイドリアン・アダムス

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