出久根育さんの本は、個人的にとても好きなのでこれまでも何度か紹介させて頂いたのですが、先日銀座教文館のナルニア国で開催されている「こうさぎとほしのどうくつ」の原画展を見て、やはり特別に心動かされるものがあったので、会期が終わらないうちに出久根育さんの絵本を紹介させていただきたいと思います。
この「おふとんのくにのこびとたち」は2005年に出版されたもので、出久根さんの絵本の仕事では初期の作品と言えるでしょうか。おちのりこさんがお話を書かれていますが、ストーリーが言葉で進められるのではなく、漫画のようにコマ割りされ、コマごとに少しずつ変化していく絵で物語が進んでいきます。
熱を出して、おとなしく寝ていなければならないひさこちゃんがお布団でお山を作って遊んでいると、どこからか小さな声が聞こえてきます。ふと見ると、布団の山には雪がつもり、小人たちがスキーをしたり、焚き火をしたり。テーブルに真っ白いクロスをひろげれば、あっと言う間にごちそうが並びにぎやかな宴が始まります。ひさこちゃんがふとんの端を引っ張ると、小人たちはひっくり返り雪まみれ。
そして、お布団から覗いているひさこちゃんに気が付きます。そこでひさこちゃんの熱を下げるためみんなで協力してあるものを作るのですが…。いったいどんな方法で大きなひさこちゃんの熱を治してあげるのでしょうか。
寒気がしたり、頭が熱くなったり、あるいはその熱を冷ましてくれるのも、小人たちの仕業なのかもしれませんね。小人たちの行動が、熱を出したときのあのぼーっとした頭にいたずらをしているように重なります。
出久根さんは、作品ごとに画材や作風を描き分けるのですが、どの作品にも共通しているのは、その丁寧で繊細な筆致です。この絵本でも、小人の服一枚一枚に規則性のある細かな筆の流れがあり、材木の表情、布団の柄、どれを見てもその緻密さが伺えます。それでいて、すべてがフリーハンドで描かれているので、柔らかくやさしい印象を与えます。
先日の原画展を見ても感じたのですが、出久根さんの絵は、絵本で見るのと原画で見るのとで、大きく印象が変わることはありません。ですが、印刷ではどうしても再現できないほど繊細な表現をたくさんしているのだと、原画を見ると気がつくことが出来ます。
ナルニア国の展示では、そんな出久根さんの絵の魅力を損なわず絵本にするため、のら書店さんが尽力した資料も見ることが出来ました。この絵本は、偕成社さんより出版されたものですが、きっと同様の工夫や努力があり、こうして一冊の本になっているのだと思います。
ぜひ、出久根さんの細やかな手仕事をこの絵本で味わっていただきたいです。
教文館で無料で見られる展示も来週まで開催しているそうです。ご興味ある方は是非ご覧になってみてください。
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「おふとんのくにのこびとたち」出久根育
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