先週instagramにて紹介させて頂いた本です。既に売れて在庫のない本もあるのですが、よろしくお願い致します。
まずはこちら
瀬川康男さんの画集『いきとしいけるもの』です。
以前もこちらでお話させていただきましたが、瀬川さんは35歳の時に絵本「ふしぎなたけのこ」でブラティスラヴァ世界絵本原画展の記念すべき第1回のグランプリを受賞するなどの経歴を持つ、日本を代表する絵本作家と言えます。
その瀬川さんの初期の仕事から晩年の作品まで、贅沢にカラーページで辿ることができるのがこの画集です。
ふんだんに掲載された絵が魅力のこの本ですが、初期の画法“まぜまぜ技法”の話や、こだわりの版画の手法の話など、大変興味深いコラムも掲載されています。
もう、お見せしたいページばかりで困ってしまうほどなのですが、今回upさせていただいた写真は1988年に福音館書店「たくさんのふしぎ」1月号のふろくとして描かれた「かっぱ双六」のページです。よく見ると数字は全てかっぱ。“かっぱ”の文字までかっぱです☺️瀬川さんらしい線と色、ついつい一コマずつじっくり眺めてしまいます。
当店在庫はこちら「生きとし生けるもの 瀬川康男画集」
続きまして
「たいせつなこと」や「しずかでにぎやかなほん」で知られるレナード・ワイスガードの「かみさまのほん」です。
1969年初版発行の古い本で(当店入荷商品は1970年3刷)お話はフローリンス・メアリ・フィッチ、翻訳は谷川俊太郎さんがなさっています。
ワイスガードはデザイン性の高い、リズミカルな絵の印象が強いですが、本書では静かな、絵の中の場所の風の音でも聞こえてきそうなタッチで、読み手を惹きつけてくれます。
文章は詩と散文のあいだのような、素朴な「かみさま」を描いていて、谷川俊太郎さんの訳文が胸に染み渡ります。
当店在庫はこちら「かみさまのほん」ワイスガード
お次は、ハンス・フィッシャーが描いたグリム童話の一枚絵「メルヘンビルダー」です。
一枚絵というのは、古くからある庶民のための新聞のようなもので、読み書きが自由でない人々に愛され、キリスト教の教えや、通俗的な知識、世界の不思議や珍しい話を民衆に広めました。この一枚絵を芸術の域にまで高めたのが19世紀中頃に出版された所謂「ミュンヘン一枚絵」(ほるぷ出版より復刻出版されています)です。
一枚の美しい絵の中に物語が詰め込まれ、それは後のアニメや漫画の源流ともなりました。
ハンス・フィッシャーの「メルヘンビルダー」はグリム童話の色々な話がその一枚絵で描かれている本です。upしました写真の、長ぐつをはいたねこ、この一枚の絵の中にお話のいろいろな場面が詰め込まれているのがわかると思います。
王様とお姫様は馬車に乗り、湖では伯爵が溺れたフリをして、お城の魔女はライオンに変身して、などなどお話の要素がすっかり詰め込まれているのです。
この一枚絵を楽しめるように、縦35cm横25.5cmとかなり大きな判型の本となっているのも嬉しいですね。
当店在庫はこちら「メルヘンビルダー」ハンス・フィッシャー
こちらは歴史的に見ても絵本の表現を芸術的に高めた一人、ブルーノ・ムナーリの代表作「nella notte buia」です。
本書は本の中が3つのパートに分かれております。始めは表紙からもう窺える夜のパート、真っ暗な紙に一点だけ切り取られた小さな丸があり、そこから星のように輝く黄色が覗いています。星を追うようにページをめくっていき夜を抜けると、次のパートの草原へ出ます。
草原のパートでは薄いグラシン紙のような紙が使われており、前後のページのイラストが透けて見え、奥行きのある不思議な2.5次元の絵を見ることが出来ます。
草原を抜けると今度は洞穴から地中の世界へ入っていきます。紙はまた変わっていて、灰色の、石や砂を思い浮かべるような紙が使われています。
仕掛け絵本とは違う方向性で、ページをめくることを含めて本を立体として捉えたムナーリの素晴らしい仕事がこの一冊に凝縮されています。
日本語訳も「闇の夜に」(なんと翻訳者は藤本和子さん!ブローティガンの翻訳者ですね)として出ていますが当店に入荷したものはイタリア語版。しかし通常流通のイタリア語版ではなく家具ブランドのカッシーナの販売店cassina ixcのノベルティとして配られた非売品です。内容に変わりないのですが見返しページと奥付けページにcassina ixcとの印字が入っています。
当店在庫はこちら「nella notte buia」ブルーノ・ムナーリ
最後はフェリクス・ホフマン「七わのからす」です。
グリム童話の絵本で知られるフェリクス・ホフマンは自分の子供たちのために、手作りの絵本を作りはじめ、そこから絵本作家へとなった作家のひとりですね。
この「七わのからす」も長男のディーターのために作られた絵本で、お話の中のからすの一匹が赤いズボンを履いているのは、この頃のディーターのお気に入りが赤いズボンだったからだそうです。
ホフマンの絵はいつも何処か少し寂しい感触がありますね。憂いを帯びていて、喜びの場面も、喜び一色ではないような、どんな喜びも寂しさと一体となっているような二面性持った、不思議な魅力が感じられます。
0コメント