ゴッホの絵ですぐに思い浮かぶのは、ひまわりや自画像ではなくて「夜のカフェテラス」と「星降る夜」なんです。
ゴッホのあの輝くような金、黄、オレンジではなくて、ゴッホの絵を見た後にはいつもあの深い青が胸に残っていた気がします。
この絵本は「ルリユールおじさん」などで知られるいせひでこさんがてがけたゴッホとテオの物語です。
「僕らは生まれるずっと前からミレーのあの祈りの風景を知っていた」そんな幼いオランダの頃のことから、神職を経て画家になり、やがて星になってしまうまでのゴッホの生涯が、弟のテオの視点で描かれています。
1990年よりゴッホの足跡を辿る旅を続け、そのエッセイを書き、また妹の京子さんとテオの評伝を共訳もしたいせさんの、その情熱が移り込んだかのような、美しい絵本です。
偏見なのでしょうけれど、ページを開くと目につくのはやはり青色です。青い空、青い雲、青い小麦畑、青い光の中のゴッホとテオの姿、それはやっぱり、自分がいつもゴッホの絵の中に見ていた青と通じているような気がします。
純粋さを求めるあまり、社会や他人と軋轢が生まれざるを得なかったゴッホ、そしてその兄を支え続けたテオの愛の物語。
この絵本の最後はテオの、こんな言葉で終えられています。
麦畑の中にきみの空がある。
空の中にぼくらの麦畑がある。
そこらは金と青の風の匂いでいっぱいだ。
この言葉に添えられているいせさんの絵を是非見てほしいです。美しい青と金の調和、それはゴッホ最後の作品と言われている「カラスのいる麦畑」のテオの目から見た風景のようにさえ思えてくるのです。
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「にいさん」ひせひでこ
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