「天国のいねむり男」遠藤周作 作 ヨゼフ・ウィルコン 絵 Jozef Wilkon

1980年代に全六巻出版された絵本のシリーズ「メルヘンの森」の中から本日2冊が入荷しましたので、そのうちの一冊、こちらは遠藤周作、ヨゼフ・ウィルコン絵による「天国のいねむり男」です。

表紙にはサンタクロースらしき人物が描かれているのでクリスマスのお話なのかな、と思いきや、読み進めてみると、なんとも不思議なお話です。

天国にいるイエス様の弟子たちのなかに、居眠りをすることと食べることが大好きで、いつも失敗ばかりしていたために聖書にも名が残っていない「ズボラ」と言うものがいました。しかしイエス様はこのズボラをたいへん愛しておいででした。

ある日イエス様は居眠りをしているズボラを揺り起こして、近頃の地上の子どもたちがスーパーマンに夢中になったりしているが、もう少しかみさまのことなどを考えうように努力してくれないかと頼みます。

これは困ったと思いながらもズボラは子どもたちの大好きなサンタクロースの扮装をして、地上へ行くことにします。

降り立った場所は東京、そこで出会った子どもたちに声をかけるのですが、出会う子どもたちはみな塾に通い、遊ぶことには見向きもせず、大きな子どもはあやしい格好をしたズボラを警察に通報しようとするので、ズボラは逃げ出します。

困り果てたズボラはイエス様にどうにかしてくださいとお願いをすると、イエス様はその声を聞き入れ地上を緑の楽園へ変えるのです。

子どもたちは喜び、塾の入ったビルから飛び出し野原を駆け回り、鳥や風とともに歌うのですが・・・。

最後には痛烈なアイロニーを含んだ結末を迎えるのですが、これは実際に手にとって読んでみて下さい。ズボラののんびりとした口調で語られる言葉が現代に生きるわたしたちの胸に突き刺さります。

ヨゼフ・ウィルコンは主にポーランドの画家/絵本作家でワルシャワやチューリッヒの出版社で絵本を数多く出版しておりますが、遠藤周作さんとは数冊一緒に絵本を作っているようですね。詳しい経緯はちょっと不明なのですが、今後ちょっと調べてみようと思っています。

遠藤周作さんの数少ない絵本作品はどれもヨゼフ・ウィルコンとの共作らしい(3冊?)というのも、気になりますね。

当店在庫はこちらです。

天国のいねむり男」遠藤周作 作 ヨゼフ・ウィルコン 絵

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