こちらの絵を見れば、誰が描いたものかすぐにわかる方がたくさんいらっしゃるかと思います。日本でもとても人気があり、たくさんの絵本が邦訳されているアメリカの絵本作家バーバラー・クーニーです。以前、ブログの方に彼女の描く「しらゆきべにばら」を取り上げさせていただきましたが、意外にもこちらでご紹介するのは初めてかもしれません。
この「わたしは生きてるさくらんぼ」は、アメリカの評論家であり、詩人でもあるデルモア・シュワルツの詩にクーニーが絵を添えた小さな絵本です。本文は一編の詩なので、あっという間に読み終わってしまうのですが、その内容はちいさな女の子の生きるよろこびをたたえる賛歌となっていて、短い言葉のひとつひとつが眩しく宝石のように輝いて響きます。そのため、何度も何度も繰り返しその言葉に耳を傾けたくなり、また読み終えたあとにはどこまでも軽やかに余韻が続きます。驚くべきはこの詩を男性であるシュワルツが書いていることです。どのような経緯でこの詩ができたのかとても気になりますが、T・S・エリオットやエヅラ・パウンドから賞賛されていたというのも頷けます。そして、その詩の言葉ひとつひとつを丁寧に拾い上げ、そして見事に描き出したクーニーの女の子の世界は、おだやかに静かに、そして力強く見るものを惹きつけます。詩に合わせ、色を駆使した後半部はページを開くたびに生き生きとした女の子の生命力が伝わってくるのです。
シュワルツとクーニー、この二つの繊細な輝きがひとつなった珠玉の一冊だと思います。最後に、本文から少しだけ、ランダムにシュワルツの言葉を紹介させていただきたいと思います。長々と書いてしまいましたが、きっとこちらを読めばこの本がどんな空気を纏っているかわかっていただけると思います。
わたしは生きてるさくらんぼと ちいちゃな女の子がうたいます
まいあさわたしはあたらしいものになるのよ
わたしはリンゴ
わたしは木
わたしは花になってひらいたりもするの
そしてときどき わたしはいろんなものぜんぶになりたいなんておもうの
わたしはあかよ
わたしは青なの
わたしはいつもわたしでしょう
「わたしは生きてるさくらんぼ」シュワルツ 詩 クーニー 絵
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