「誰も気付かなかった」「風のことば 空のことば ~語りかける辞典~」長田弘 いせひでこ

詩人の長田弘さんがこの世を去ってこの5月で5年が経ちました。

こうした機会に、4月、5月と2冊の長田さんの本が発売されました。

ともに当店にも入ってきましたので、長田さんの1970年代の著作などとともに、オンラインストアの方に上げさせて頂いております。

「誰も気づかなかった」(みすず書房)は生前に連載していながら一冊の本としてまとまってはいなかった「誰も気づかなかった」と「夜の散文詩」のシリーズの5篇を小さな本にまとめたものです。

「誰も気づかなかった」はまるで禅問答のような、アフォリズム集のような、深い洞察に満ちた言葉と、その声のリズムの、美しい詩篇です。

たとえ誤りにみちていても、

世界は正解でできているのではなく、

競争でできているのでもなく、

こころをもちこたえさせてゆくものは、

むしろ、躊躇や逡巡のなかにあるのではないか。

今の、この時代の空気を吸う私たちの胸にも、深く響く、詩人の言葉がここにはあります。

新刊のもう1冊は、いせひでこさんが絵を描いた「風のことば 空のことば ~語りかける辞典~」(講談社)です。

長田さんは逝去される2015年5月までの11年間、読売新聞「子どもの詩」の選者を務めておりました。その、選んだ子どもの詩に毎日添える「選評」だけを独立した一冊にまとめ、『語りかける辞典』という書名で出版したい、そうした長田さんの遺志があったそうです。(出版社の本書の紹介文より)

タイトルの通り、長田さんの言葉は読むものに優しく、けれども芯を持って語りかけてくれるように感じます。読者が大人であっても、まるで子どもに戻ったように、その声に耳を澄ませてしまいます。

この詩人の言葉の前で、子どもに戻ることはなんと幸福なことなのでしょうか。

挿絵を手掛けているのは、「最初の質問」「幼い子は微笑む」で長田さんの詩を美しい絵本に変えたいせひでこさんです。

いせひでこさんの、繊細でありながら優しさに包まれた挿絵が、長田さんの言葉とともに読者の心に入っていきます。

没後5年を迎えた長田さんの「新刊」2冊。

当店の持っていた長田さんの古書とともに、ぜひオンラインストアの方でも御覧ください。


当店の長田弘さんの本はこちらです。

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