「しばふって、いいな」レオーネ・アデルソン 文 ロジャー・デュボアザン

紹介を少しだけ迷っていた本です。それはとても良い本だから。

この気持ちの良い季節に、草や花を、木を、空と緑、たくさんの活動的な虫たち、その中に飛び込む楽しさを、この本は伝えすぎてくれるのです。

「しばふって、いいな」

鮮やかな緑が目を引くこの本は、今年の3月に発売された絵本です。

マーク・シーモントの「木はいいなあ」を思い出すタイトルですが、その響きのとおり、芝生の上にある楽しみや幸せをレオーネ・アデルソンの軽快な言葉と、ロジャー・デュボアザンの鮮やかなイラストで描いた作品です。訳はこみやゆうさん。

皆が外出自粛をして、フラストレーションを少なからず抱き始めている時です。子どもがこれを読んだらきっと外に飛び出さずにはいられなくなります。大人だってそうです。それを制止されることは、少し酷なように思ったのです。

けれど、この本、気持ちが良いんです。晴れた日にベランダで読んでも、雨の日にお布団の中で読んでも、ページを開くたび、鮮やかな青が、緑が、視界いっぱいに飛び込んできて、もうそのまま目を閉じたら、のっしのっしと私は草の上を歩いています。遠くを眺め、近くを凝視し、あっちに川が、目の前の草をかき分けたら知らない虫が、草の上に寝転がって本を読んで、雨が降ったらカエルが雨宿り。デュボアザンが仕掛けた次々に変わる視点。それは、完全なる体験ではないけれど、気持ちがスーッとする体感です。想像して、ワクワクして、ウズウズしてもう一度読み返す。本の中に広がる芝生に体を預ける。

結局は、きれい事になってしまうのかもしれないのですが、やっぱり遊びに行けないモヤモヤを助長してしまうことになるのかもしれないのですが、この本にちゃんと魔法の力があると思ったので、今、読んで欲しいなと紹介させていただきました。

春はもう来ていて、外はこんな世界が広がっています。そしてそこへは、この絵本の中から行けるはず。



当店のデュボアザンの絵本はこちらです。

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