動物たちに聴かせる、夜の音楽会。
「セロ弾きのゴーシュ」
小林敏也さんによる「画本 宮澤賢治」のシリーズは当店にも度々入ってきますが、こちらは本日新着商品として更新しました。
以前はパロル舎から刊行されておりましたが、現在は好学社から出ております。
今回入荷したものは旧版のパロル舎版ですね。
金星音楽団の中でも一番下手だったチェロ弾きのゴーシュ、楽長からは怒鳴られ、本番に向けて努力をしても、中々上手くはなりません。
それでも夜遅くまで練習をしていると、夜毎に動物たちがやってくるのでした。
猫、カッコウ、狸、ネズミ。
動物とは喧嘩しつつも、自分の音楽や人間性について省みることになったゴーシュはその腕を上達させ、本番には喝采を浴びるのでした。
宮澤賢治の文章にはいつも音楽が鳴っていると感じるのですが、このお話はそのまま音楽のお話ですね。
少しわかりにくいことを言うかもしれませんが、宮澤賢治の作品にいつもあるものは、表面的なものと内面的なものの調和/関連性への志向があるとおもうのです。
換言するならば、美しい心と美しい行いの関連性と言ったような、そうしたある種のヒューマニズムをいつも感じるのです。
このセロ弾きのゴーシュでは、それが音楽に現れ、音楽を演奏する者の感情の重要さが描かれていると読むことも出来ます。(動物たちに段々と優しくなっていくゴーシュ→演奏の上達と関連している)
このことは宮澤賢治が信じた(願っていた?)、人間の善性から来るのでしょうか。
この作品で絵を描いている小林敏也さんの表現でとても面白いと思うのは、動物たちの姿の描かれ方です。
最初の晩の猫は、ほんとうに意地悪そうな化け猫のように描かれているのですが、最後の晩のネズミなどはとても可愛らしく描かれていて、これは、その動物たちがゴーシュの心をそのまま映した鏡のような存在になっていると見ることも出来るかと思います。
そしてこれは、宮澤賢治の絵本全般に言えることなのですけれど、小林さんが描く宮澤賢治作品の夜と青の表現も美しくてすごく好きです。
暖かさと寂しさが同時にある、夜の色。
ぜひオンラインストアの方でもご覧ください。
当店の宮澤賢治の作品はこちらです。
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