Antoni Boratynski(1930-2015)

聖堂ではなく、洞穴の中のシャガール、初期の作品はそんな形容もしたくなる、強烈な個性を持った作家です。

このAntoni Boratynski(アントニー・ボラチンスキー)は、ポーランドの絵本を代表する作家のひとり、と言っても良いのではないでしょうか。

ヨーロッパ諸国のみならず、日本語の翻訳絵本もありますし(既に絶版になって久しいですが)、国際的な賞の受賞もあり、またドイツの児童文学作家などとも組んで作品を幾つも出していたりと、国際的な評価も非常に高い絵本作家だと言えると思います。

1930年生まれのボラチンスキー(2015年没)は、1950年代後半、その戦後のポーランドにおいて多くの子どものための絵本を制作しました。

しかしそそれは、ただ可愛らしいだけの絵で、読者を楽しませるものではありません。

色彩は全体に暗く、悪夢と思わせるような、唯一無二の世界感で、読者を物語の奥底へ引き込んでいくのです。

それは誰の系譜といえば良いのでしょうか。

ビネッテ・シュレーダー?ドゥシャン・カーライ?確かに似た感触は持っていて、この二人も偉大な作家です。けれどどちらもボラチンスキーよりも下の世代なんですね。

ボラチンスキーを語るときには、他の絵本作家よりも、古典たる画家の名前を出さなければいけないような気がします。

先に挙げたシャガール、そしてアンリ・ルソー、ブリューゲル、こうした画家からの影響は特に顕著なのではないでしょうか。

今回買い付けてきたボラチンスキーのポーランド絵本の中でも「SLONECZNY KON」の絵などは現代の絵本の制作からは考えられないほど「暗い」絵です。雰囲気が暗いのではなく明度がとても暗いんです。

表紙の絵など、何度も目を凝らしてしまうほど暗く少し暗い部屋で見ると、その絵の半分は暗くて見えないのではないか、と感じてしまうほどです。こんな絵本、なかなか無い気がします。

こうした作風に、ポーランドの戦争の惨禍を見ることも出来ますが、ボラチンスキーはその暗さの奥に優しさや希望が、確かに描かれているような感覚があります。それは、やはりシャガールもそうではなかったではないでしょうか?

真夜中の夢の中で遊ぶ子どもたち。

真っ暗闇の奥、日が昇る前の薄明。

深い美しさをもった、ボラチンスキーはの絵本です。

ポーランドで買い付けてきた、珍しいものを幾つも更新しております。

ぜひオンラインストアでもご覧ください。


当店のアントニー・ボラチンスキーの本はこちらです。

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