今週は刺繍と関連するような絵本を紹介しておりますが、この本はそのまま刺繍で絵が描かれた絵本です。
「douze」
作者はGwen Le Gac、ソニア・リキエルでテキスタイルデザイナーとして働いていたキャリアも持つ彼女ですが、そうしたキャリアを感じさせる作品も多いのですけれど、作品ごとにかなり違った作風で、しかしそのどれもとても魅力的な絵を見せてくれる、当店でも現代のフランスのイラストレーターの中では一番推している作家だと思います。
この刺繍で描かれた絵本「douze」、タイトルは数字の12と言う意味ですね。
12と言うのは、1年のこと。12ヶ月。子どもが生まれて、最初の一年間。
それに呼応するかのように、12の言葉と12の絵で、この作品はできています。
言葉はそれぞれひと言だけ。
右のページには赤ん坊の絵と言葉が、左のページにはその赤ん坊が見ているであろうものが描かれています。
mon rieur(わたしの笑い)
右のページには笑う赤ちゃん。
左のページには可愛らしいモビール。
mon promeneur(わたしの散歩)
右のページには目を輝かせる赤ちゃん。
左のページには小さな靴。
糸で描かれた絵は何処か優しく、それは子どもに対する愛おしい気持ちとも響き合っているでしょうか。
色の使い方も楽しく、素朴で、優しさと喜びに満ち溢れた素敵な一冊です。
(話がズレてしまうので()の中に書きますが、この刺繍での描かれた絵を「子どもに何かを手作りで作ってあげる」という愛情と呼応している、と言う見方は自分はしたくありません。それは「母親」というものへの固定観念、もっと強く言うと強迫観念を無意識に補強してしまう恐れがあると思うからです。手作りで何かすること(「所謂昔ながらの母親像」を務めること)が全くの善なのでは無く、ただの愛情のヴァリエーションの一つに過ぎないという事を、自分はいつも意識していたいのです)
そうした見方をせずとも、この絵本はとても美しい一冊です。
最初に「私の娘たちに」と献辞が書かれていますが、ただ、Gwen Le Gacが得意な表現方法で、子どもたちに愛情を示した、そんな愛に溢れた一冊だと思うのです。
是非オンラインストアの方でもご覧ください。
当店のGwen Le Gacの本はこちらです。
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