フィリップ・デュマのペーパーバック絵本が2冊入荷しています。
どちらも薄く小さめの本ですが、デュマの魅力が詰まった素敵な作品です。
タイトルは「La petite geante」直訳すると「小さな巨人」
こちらの可愛い絵本はこんな風に始まります。
「あるところに、黒髪の女の子と金髪の男の子がいました。
目はガラス、体はプラスチックの本当に大人しい子どもたちでした…」
そう、二人のお人形と、その持ち主である「人形にとっての巨人」の女の子のお話です。
小さな巨人は二人をとっても可愛がってくれます。けれど、食事をする時に、食べさせるふりだけで何も食べさせてくれないのにはちょっと困ってしまいます。夜になると、もっと大きな巨人がきて(お母さんですね)ベッドへ連れて行かれます。真夜中、並んで眠る三人に不思議なことが起こります。小さな巨人の体が小さくなって、お人形とおんなじに。そうしたら三人はベッドを飛び出して家の外へと出かけます。
草原を駆けたり、靴のボートで川を渡ったり、うさぎのうちでスープをご馳走になったり。
しかしやがて明るくなってくると…
すでに絶版となっていますが、過去には「まよなかのぼうけん」というタイトルで日本でも出版されていました。内容とはしっくりきますが、個人的には原書のタイトルがユーモラスで気に入っています。フランス語ですが、絵を見るだけでも十分おはなしをたどっていただけますよ。
もう一冊の「Le temps des cerises」は、パリ・コミューンの一員だった銅工職人が作詞をし、テノール歌手アントワーヌ・ルナールが曲を付けた淡い失恋の曲をデュマが絵本にしたものです。宮崎駿さんの「紅の豚」の中でマダム・ジーナが歌っているのもこの歌ですね。歌詞、そして時代背景を思わせるデュマの悲しくも美しい絵が印象的です。この歌はジーナの声を務めた加藤登紀子さんによって日本語でも歌われていますので、歌詞の内容はそちらでも読むことができます。
個人的にデュマの線は人物にその魅力が最も表れるように思っていたのですが、この二冊を見て、そんなに多く登場するわけではないのですが、植物の描写に惹かれました。柔らかく軽やかなのに、存在感があるのです。輪郭線の加減、色の置き方、色々秘密はあるのでしょうけど、こうしてモチーフ一つに注目して絵を見るのも面白いですね。
内容はまったく異なりますが、どちらもデュマの美しい絵を楽しんでいただけます。小さめのサイズも可愛らしく、同じ大きさですので2冊並べて飾っておきたくなります。
当店のフィリップ・デュマの本はこちらです。
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