「La très vieille légende sans poussières du coin du balai」AИИe Herbauts

アンネ・エルボーの描く不思議な物語の世界は寓意と象徴に満ち溢れ、私はその物語を読むたびに、これこそが現代のお伽噺なんだと溜息するのですけれど、そのお話を読んだ時の感動を、上手く言い表すことがいつも出来ません。

短いテキストであるにも関わらず、深い深い、その不思議の森のなかに迷い込み、その言葉の中で、私は自分の言葉を忘れてしまうようです。

たぶんきっと、私は、アンネ・エルボーの語るその物語が、ちっともわからないのです。頭で理解することが出来なくて、その感触や色を、目の前にして、ただ驚いているだけなんです。


「La très vieille légende sans poussières du coin du balai」AИИe Herbauts(2001年)


ベルギーの古い伝説に基づくこのお話は、ラマセットと言う一人の男の人のお話です。

彼は深い森の中に住み、そこで身の回りのあらゆるものを、箒で綺麗にすることに取り憑かれ、暮らしていました。

また、この森の向こうには王様が住んでいて、彼はイメージ/映像というものに取り憑かれ、様々なイメージをコレクションしている王さまなのです。

ある日、イメージを「狩り」にこの王さまは、従者のカダック(写真メーカーのコダックのもじりですね)を連れて、森へと入っていき、ラマセットと出会うのでした。

元の伝説は、ラマセットの歓待に感激した王さまが、その彼の箒を、その森の木で作る許可を出し、箒がその村の特産物になっていったと言う伝説だそうですけれど、エルボーのお話で付与された、王さまの性質/イメージへの熱狂と、あらゆるものを掃くラマセット、といった要素によって、この絵本の物語は不思議な膨らみと深さを獲得しています。

エルボーは、そうした幾つかの要素を描く絵でも表現していて、写真/イメージのコラージュを多用している場面もあったりと、エルボーの表現の幅を広げようとする挑戦も見て取れる絵本ですね。

ちなみにこの絵本の見返しはエルボーの描いた地図が描かれているのですが、それはこの伝説の場所である、ベルギーのBoitsfortの地図なんです。本の中では全く触れられていないのですけれど…。

アンネ・エルボーの不思議な世界の、さらに奥へと導いてくれる、とても魅力的な一冊かと思います。


当店のアンネ・エルボーの本はこちらです。

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