「Mein Geburtstagsbuch」Ivan Gantschev

季節は一番最初に花屋の店先にやってくる、そう書いていたのは長田弘さんだったでしょうか。

今日はどんな花が並んでいるのか、散歩道の途中に花屋があれば良いのですけれど、駅前まで行かないと無いので、こうしたinstagramなどで、花屋さんのものを見て、ああ、もうそんな季節なんだ、そう感じたりしています。

「Mein Geburtstagsbuch」(1991年)Ivan Gantschev

花に蝶が飛ぶ表紙の小さな可愛い本です。

タイトルは私の誕生日、といった感じで良いでしょうか。

明日四歳の誕生日を迎える女の子の、その誕生日の前日を描いたお話です。

飼っている猫と森へ散歩にでかけ、水車小屋で織物を作るおじいさんと会い、家へ帰り母親と思い出話をする。

ただ、それだけの穏やかなお話なのですが、ちょっとハッとすることばが出てきます。

例えば森のなかで暮らすおじいさん、彼は器や絨毯を作っているのですが、それらを少女に見せながらこう言います。

「人間の作るもので美しものはみな、自然を写したものなんだ」

そして少女の母親、彼女は家へと帰ってきた娘へこう言います。

「今日、あなたが生まれてから、春、夏、秋、そして冬が四回あったわ」

なんでしょう、上手く言えないのですけれど、この母親の言葉、とても良いな、って思うんです。

この四歳を迎える女の子の、その四年を、四つの季節に分けて捉えることが、一年一年を数えることよりも、詩的でなんだか美しい感じさえするのです。

この女の子も、その母親の言葉を聞いて「わたし、その秋を覚えているわ」そう言って、秋の思い出を話し、次いで冬の思い出をも話すのです。

父親のことば、友達と雪の中で遊んだこと。

そして今はまた春です。明日は誕生日。


この絵本はBilder Buch Sternchenと言うドイツの小さな絵本のシリーズの一冊ですが、このシリーズではリスベート・ツヴェルガーやヨゼフ・パレチェクのものはよく見る気がしますね。

値段も手頃な可愛らしいシリーズで、おすすめです。


当店のイワン・ガンチェフの絵本はこちらです。

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