本を幾らか読んでいると、例えばある季節、ある天気のときに、ああ、これはあの本の中の、あの場面のような空だ、なんて思うことが度々あって、そうすると、目の前に広がっている世界に、自分の中に溜め込んでいたフィクションの世界が重なって、他の誰かにとってはただの冬の日でも、いつもよりも不思議な奥行きをもって、その寒さを感じられることがあったりします。
これは別に本だけじゃなくて、すべてのフィクションに言えることですけれど。
それは季節の現象だけじゃなく、もっとひとつひとつの物自体に広がっていっていることもあって、たとえば花。プルーストで言えば、マドレーヌ。
この花束は、あの本の中の、あの花と一緒、なんて。
現実の世界にフィクションを持ち込む欲望は古来から様々あって(たとえばハロウィンの仮装もその一種だと自分は思っています)、そのひとつが「シェイクスピアの庭」なんじゃないでしょうか。
シェイクスピアの、戯曲の中に出てくる様々な花を集めた庭、愛好家が作った庭が世界には幾つもあり、その美しさに(きっとその、フィクションと現実世界の美しい響き合いに)、ウォルター・クレインが感銘を受け作られた絵本がこの「Flowers from Shakespeare’s Garden」です。
シェイクスピアの戯曲では隠喩として、植物がしばしば用いられています。
その植物が登場するテキストに、擬人化した花を描き、クレインは一冊の美しい絵本にしたのでした。
ウォルター・クレインはトイ・ブックの仕事の後、その晩年にかけて、こうした擬人化した花を描いた作品(所謂フラワーシリーズとも呼ばれています)を様々に制作しております。この「Flowers from Shakespeare’s Garden」は1906年の作品で、その中でも後期のものですね。個人的にもこのフラワーシリーズの中でも特に美しいと持っている1冊です。
そんな素晴らしく、また貴重なこの本ですが、本日はこの絵本の1909年の2刷のものを更新しております。印刷はリトグラフです。
クレインの絵、印刷もまた美しく、そして何より本の状態もとても良いです。表紙、裏表紙にはイタミが見られますが、中は素晴らしいコンディションを保っています。
コレクターの方にも自信を持ってお薦めできます。
高価な本ではございますが、宝物になる一冊だと思います。
是非オンラインストアでも御覧ください。
…ごめんなさい!この記事を更新しようとしていたらもう注文を頂いてしまいました!ありがとうございます。
オンラインストアではあわせてこの絵本の日本語版と、ウォルター・クレインが表紙デザインを手掛けた「WAYFARER’S LOVE(1904年)」という詩集も更新しております。
こちらもどうぞご覧ください。
当店のウォルター・クレインの本はこちらです。
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