本日は戦後日本の美術界を代表するひとり、赤瀬川原平さんの絵本を更新しております。
「四角形の歴史」
判型も単行本で、パッと見た感じはちょっと難しそうな読み物かな、と思ってしまうのですが、中はれっきとした(?)絵本なんです。
これは赤瀬川原平さんの「こどもの哲学 大人の絵本」と言うシリーズの1冊です。
お子さんでしたら、小学校高学年くらいからが良いでしょうか。
何故?ということが、自分自身の心の中へと向き始める年齢、考えるということに意識的になり、深く考えることの面白さ、楽しさを味わうことが出来る年齢になったときに出会えたら、素晴らしい本なのではないかと思います。
タイトルは「四角形の歴史」となっていますが、数学の話ではないんです。
絵の話。それもただ絵というよりも、「見る」ということ、そもそも「見る」ということは一体どういうことなのか?ということに迫っていく絵本なんです。
この疑問を、赤瀬川さんは自分自身の中に定め、考え考え、絵とお話を進めていきます。そして読者もこの絵本を読みながら、赤瀬川さんの思考とともに歩いていくことができるのです。
「見る」ということについてのそのシンプルな疑問を片手に、人間の古い歴史の森の奥へと分け入っていく体験はとてもスリリングで、赤瀬川さんの思考の道筋を追いながら、膝を打ったり、いやそれはこうでもあるんじゃないか、とまた別の道を見つけたりと、短いこの本の中を行ったり来たりしながら、とても愉しい読書の時間を過ごすことが出来ます。
ここだけ抜き出すとちょっとロマンチックに過ぎるかもしれませんが、赤瀬川さんが論を進めながら「人間がはじめて風景としてみたのは、雨の風景かもしれない」と書いたところへ行きあたった時には、なるほどなあ、と言う思いとともに、自分の中の「雨の風景」が幾つも湧き上がり、それが、人間の(自分という個別の人間の記憶としてではなく「人間」の)古い記憶と触れた気さえしたのでした。(自分はこの時チェーホフの短篇「学生」を少し思ってもいました。理由を説明すると長くなるので…この素晴らしい短篇も是非読んでみてください)
赤瀬川さんの本は当店には「A Tale of Six Talented Men」というグリム童話を絵本にしたものも在庫がございますので、どうぞこちらもあわせてオンラインストアでもご覧下さい。
当店の赤瀬川原平さんの本はこちらです。
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