こちらはナンシー・エコーム・バーカートの「Valentin und Urs」
フランス中世の物語、所謂「カロリング物語群/フランスの素材」とも呼ばれる騎士道物語の有名な一篇に、バーカートが挿絵を付けて絵本にした本のドイツ語版です。
ナンシー・エコーム・バーカートは日本語にも翻訳されている「白雪姫と七人の小人たち」(絶版)の美しい白雪姫の表紙に目を奪われて虜になった方も多いのではないでしょうか。
このお話は、王家の血を引く生き別れになった双子の兄弟の物語です。
一方は熊に育てられ野生児に、一方は立派な騎士になり、やがて運命の名の下に二人は出会い、そして自らの出自を知るのです。
バーカートはこの中世の騎士物語を、舞台の上での演劇、見世物として語られたものとして絵本にしています。場面場面が、舞台上で演じられている、というのをそのまま描いているんですね。
そうすることによって、お話が何処かコミカルな色を帯び、ぐっと親しみやすさが増しています。
そしてこの絵本でもやはり、あの繊細なバーカートの絵は存分に味わうことが出来ます。
登場人物たちの衣装、各章の数字を取り囲む装飾、そうした細かな部分の意匠は見事というほか無く、またこの絵本はカバーを外すと布装なのですけれど、その表紙には文様が施されていて、そうした隠れた部分にもこの本を手にする人の喜びをまた一段と高めてくれる仕掛けがあって、なんとも楽しい絵本なのです。
当店のナンシー・エコーム・バーカートの本はこちらです。
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