いつのまにかもう暑かった夏は終わって、雨の続く季節になりました。
もう大人の自分は窓の外の雨音を聞いていると、ある感慨が、幾つもの記憶の層によってきっと出来ている「雨の日の気分」に少しだけ浸ってしまうのですけれど、子どものときの「雨の気分」は今とは随分と違うものでした。
最近それを思い出したのは、ここのところ雨の日に傘ではなくてレインコートを着る機会が多かったからなんです。レインコートだと、傘よりずっとまるで本当に雨の中にいるみたいで、それが何だか懐かしく、ずっと昔の雨の日の中にいるようで、素敵でした。
イブ・スパング・オルセンのこの「あめ」と言う絵本も、また違った「雨の日」を教えてくれる絵本です。
雨の日に窓から外を眺めていた女の子、シャルロッテの前にふたつぶの雫がやってきて、シャルロッテに話しかけます。
この仲良しのふたつぶの雫は、自分たちがどうやってここに来たか、これから何処へ行くのか、シャルロッテに聞かせてくれます。
水が地球を循環する様子を、厳密に、科学的に説明すると言うよりも、楽しくわかりやすく、水の「お話」を聞かせてくれるのです。
ところで、この絵本を読んでいるときに、かこさとしさんだったらもっと科学的/厳密に説明しながら描くのだろうなあ、と思ったのですが、今年の11月に発売予定のかこさとしさんの最後の絵本(絵は鈴木まもるさん。以前NHKで、制作/打ち合わせの様子などが放送されていた作品ですね)は「みずとはなんじゃ?」という絵本だそうですね!これも楽しみですね。
オルセンの描く雨粒/水たちが、人間たちの生活の中を、地球の上を、駆け巡っていく様子が可愛らしく、楽しく描かれているこの絵本は、子どもに水の循環を教える意図も勿論ありますが、決してお勉強の方面には軸足を置かずに、何より絵本の楽しさが溢れた作品でもあります。
あらゆる場所で生き生きと活躍する雫たち。
その冒険を語り終えた雫たちはシャルロッテにさよならを告げてまた行ってしまいます。
「…それからというもの雨が降るとシャルロッテは…」
この絵本はこんな文章で締めくくられています。
シャルロッテは雨の日に、その雨に、その日からはは違う思いを抱くようになるのですが、読者の私たちにも、この絵本を読んだ跡には、雨の日の記憶の層がまた一枚重なって、前の雨の日もより豊かに、今日の「雨の日」を感じられるような気がするのです。
ぜひオンラインストアの方でもご覧ください。
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